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カクシン3
開けていた窓から春の風がそっと流れ込む。その風が窓際につけられている真っ白いカーテンをゆらゆらと揺らす。その風が伝染するように生徒会室にいる俺たち四人の顔を撫でた。
夕方とも言える時間に差し掛かり、遠く空では淡い春の夕暮れが顔を出している。窓から見える電線に止まった鳩が、カラスに追いかけられ逃げていく姿が見えた。
町田はゆっくりと平静さを取り戻し、落ち着いたように見える。それとは打って変わり、逸る気持ちを抑えきれない様子なのが古田である。
サックスが壊されたことが悪意によるものであり、しかも日常的にいじめが行われていた。それが理由であり悪意の行き着いた先であった。そう思っているであろう古田が、怒りを隠しきれないのが見て取れる。
そもそも古田将司という男は生徒会役員という立場で、正義感の溢れる性格である。今感情が表に出ているのは仕方がない。いじめという事実、それに加え、いじめというを隠したがっていた吹奏楽部部長の半田に腹が立っているのだろう。
半田に関しては部長として吹奏楽部の体裁を守るため、それと神田早紀への申し訳なさに揺れ、中途半端な態度、行動をとったのがまずかった。おそらく、古田と桜木にこれを知られてしまった以上、今までのようにどっちつかずの立場ではいられないだろう。
しかし今回の件、結論を誰が出すのによって結末は大きく変わるであろう。古田は事実を勘違いしている。もちろん俺が答えを出すわけではないが、みなが納得する結末にしなければならない。そのことに気が付いているのは今、俺と桜木の二人だけだろう。
桜木は町田の横に座り、背筋を正したまま何か考えているようだった。
納得する結末といえばそうだが、しかしこの場にいる全員が納得したとしても意味はない。問題はそう。神田早紀である。彼女こそが今回の事件の結末を自由に変えることが出来る唯一の存在である。
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