ダンジョン物件を入手しよう

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ダンジョン物件を入手しよう

 たくさんの冒険者が集い、賑やかな笑い声で活気づいている。みんなお酒を飲んでいて結構匂います。私は今、新しいダンジョン物件を入手するためにギルドに来ています。酒臭い食堂を抜けた先にギルドの受付があります。  私は顔見知りの受付のお姉さんに新しいダンジョン物件がないか尋ねます。 「久しぶりですね。いくつかありますよ。おすすめは森の中にある洞窟ですね。地下5階のそこそこ大きいダンジョンでさらに状態も良く、近くに大きな湖があって立地も良いかと思います」 「へ~素敵そうなダンジョンですね。そんな森や湖がある場所にあるなら近くに村があるんじゃないですか?」 「それがですね。近くに村はあるんですよね。やっぱり近くに村がある物件はダメでしょうか?」 「残念ですが、近くに村があるならその物件はいらないですね」  私が何故、近くに村があるダンジョンを避けるのかというと、物件を契約した魔族が村を襲う危険があるからです。もし襲った場合は、ギルドから討伐命令が出て、せっかく契約した魔族が討伐されてお金が入ってこなったり、最悪の場合、損害賠償を不動産側が請求されることがあるからです。仮に魔族が村を襲わなくても村に何か良くないことがあると言いがかりをつけられたりでデメリットが大きい物件となるので扱いが難しいのです。こんな厄介な物件はいりません。 「それでは他に良い物件はありますか?」 「もう一つありますよ。これも洞窟なんですが人工的に作られたもので結構広いんですよ」 「それは買い手がすぐに見つかりそうな良い物件ですね。そこの物件をいただきます」 「ですが……」 「何か問題でも?」 「中に魔族が住み着いちゃってるんですよね。なので討伐隊を出さないといけなくて」 「そうなんですね。わかりました。いつもみたいに討伐隊を出すのに必要な費用の何割かはこちらで持ちますよ」 「本当ですか! ありがとうございます!」 「それでは討伐が終わったらお知らせください。その後、物件の契約がまとまったら仲介手数料の5割とそのお客様の情報を持ってまたギルドに来ますね」 「はい。それで大丈夫です! ありがとうございます!」 「いえ、こちらこそ良い物件を譲っていただいてありがとうございます。それでは失礼しますね」  新しい物件の入手はだいたいこんな感じでギルドが所有しているダンジョンを譲ってもらっています。  特に問題なく譲っていただける場合、そのダンジョンを契約したお客様の情報をギルドに渡すことでダンジョンを譲ってもらっています。ギルドとしては管理を不動産に任せつつ、そこにいる魔族の情報も把握できるとのことで、こちら費用がかからず物件を入手できてまさにウインウインな取引です。もちろん契約書にはギルドに情報を渡すことは記載してますよ。小さな文字でですが。  また、今回のようにダンジョンに野良の魔族が住み着いてしまっている場合は、こちらがいくらか討伐隊の費用を負担する形で譲ってもらっています。仲介手数料が発生して通常より契約のハードルが高い物件にはなってしまいますが、このように譲ってもらうダンジョンは買い手がすぐ見つかりそうなものを取引しているので問題ありません。  今回も良いダンジョンを譲っていただいた嬉しさから無意識に鼻歌を歌いながら自分のお店へ帰った私なのでした。
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