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強制退去
私は今、腰に太刀をぶら下げてある場所に向かっています。
突然ですが、もし家賃を払わないとどうなるか知っていますか?
3か月連続で家賃が支払われない場合は、通告をした上で契約者様には強制退去していただきます。そうです。私は強制退去の処理をしにその方のいるダンジョンへと向かっているのです。そのダンジョンは塔タイプなので最上階まで登るのが面倒です。契約者様はリザードマンの長でお仲間がたくさん住んでいるので抵抗されたら厄介ですね。
なんとかダンジョンの最上階まで登り、リザードマンの長の前にたどり着きました。
帰ったら何か美味しいものでも食べましょう。
「こんにちは。強制退去してもらいに来ました」
「不動産屋か? 俺はここから離れるつもりはない!」
「ああ、あなたは動かなくて大丈夫ですよ。私があなたを斬って自分で退かすので。あなたの骸をギルドに持っていき少しでも延滞分を回収します」
「やれるもんならやってみろ。俺を誰だと思って――」
リザードマンの長が振り上げた腕を私はすかさず太刀で斬り捨てました。
腕を斬られたリザードマンの長はひざまずいて頭を下げています。
「払う! 今月は必ず払うから!」
「信じられませんね。実は前までは情けでもう1か月待つこともあったんですが、逃げられることが多くて。なので強制退去の通告後はそれ以上支払いを待たないことにしたんですよね」
「頼む! 1度だけチャンスをくれ!」
「これまで延滞している時点であなたへの信用はゼロなんですよ。残念ですが、覚悟を決めてください」
彼から魔石を取り出し、太刀に付いた血を拭って鞘に収めます。
これからお仲間のリザードマンを処理しながら帰らないといけないと思うと、気が滅入りますね。そういえばこの塔には放送機能があったんでした。
私はそれでお仲間に逃亡を促しました。長を討たれて怒り向かってくる者は斬り捨てながら塔を降りました。
20匹くらいは斬ったでしょうか。きちんと魔石も回収したので臨時報酬ということで良しとしましょう。
思いのほか疲れてしまったので、魔石を換金してもらいにギルドに寄るついでにギルドにある温泉に浸かっていきましょうかね。温泉のあとのコーヒー牛乳とアイスが楽しみです。
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