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EP.0スノードロップ
死にたい・・・
こんなの万国共通人間であれば誰もが一度は
思うことだろう。
こんな時代だ死にたくなることの一つや二つあるのは当たり前。
そんな事を思いながら
立ち並ぶビルを見上げながら歩く
『はぁ・・・』
ピコンとポケットの中のスマホが鳴る。
[何してるんだ無能が
終わって無い仕事が山ほど残っててるんだ]
なんでもない、上司からのうざったい連絡だ
そんな上司からの連絡を
何事も無かったかの様に閉じ
SNSを開くと
[生きる意味が見つかりません]
そんな内容を見つけてしまう
『はぁ、生きる意味ね、そんなものを
見つけ出せてたらもっと
楽しく生きてるっつーの』
誰かは分からないが同じ気持ちなのだろうと
そーですね。とだけリプを送る
『つまんないな』
人間とは不思議なもので
自分の気分が落ち込んでいる時は周りの事もそんな風に捉えてしまうみたいで、
周りの雑踏や会話がノイズの様に
頭の中で反復されていく
[みた?あのニュース]
[みたみた!社会のゴミだわあんなの]
[早く死ねばいいのに]
[なにこれ、キッモ]
『五月蝿い、』
そんな事を思っていたら自然と身体はビルの屋上に向かっていた。
階段を登るとその度に思う。
『どーせ死ぬ勇気なんて僕には無いのに。』
階段を登ると屋上へと続く扉がある
鍵が空いてることなんて
よほど不用心じゃ無い限り有り得ないのだが
『・・・空いてる』
神様もそろそろ死ねと言ってるのか
扉を開けるとそこには。
フェンスに手をかけて今にでも
よじのぼりそうな1人の小柄な女の子が
『何してるんだ!』
自分でも驚くくらい咄嗟に出た心無い言葉
つい数秒前まで死にたいと思っていたのに
走り出した身体。
気がつくと彼女の手を引いていた。
振り返った姿は涙を溜めた目をしていて
儚く、美しく整えられている
長い黒髪が弧を描く。
そんな彼女がゆっくりと口を開く
『なんですか、邪魔しないでください』
彼女の名前は橘 立華
これが橘 立華と僕 谷崎 大志の出逢いだ
自殺を図る奇妙な2人の関係が始まる。
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