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1.橘 立華という女
風が吹き抜けるビルの屋上
目の前には飛び降りをしようとしてた女の子
この場所にいると少し不安になる
『飯でも行かない?』
『なんですかナンパですか
死のうとしてるところを救って
ヒーロー気取りなんですか?』
なんなんだこの子は、
『ここだとなんか話しづらいでしょ?』
『まぁ最後の晩餐って考えれば耐えられるか』
そう言って彼女は階段を降りていった
『行くぞって事なのかな?』
とりあえず近くの喫茶店でも行くか
仕事はクビだろうな
そんなことを思いながら彼女を追いかけながら
喫茶店に入る
『ごめん、君が死ぬ気なんじゃないかって』
『そーよ、ここからなら簡単に
死ねるんじゃないかなって
家じゃダメ家族にバレるから・・・』
家族と言う言葉に少し引っかかる
『生きてても良いことなんて・・・
はぁ・・・死にた』
『君はさ何で死にたいなんて思ったの?』
『別に・・・ってかさ君って
呼ばないでちゃんと名前があるんで』
『ごめん先ずは自己紹介か、名前は谷崎 大志
23歳です。』
『橘 立華今は22歳だけど
来月誕生日だから同い年だ』
『そーなんだ、まぁ僕のことは谷咲でも太一
でも好きな風に呼んでくれて構わないよ。』
『私も呼び方なんて気にしないし
好きに呼んで貰って構わないです。』
そー言うと立華は静かにご飯を食べ始める
気まずい沈黙が続くと立華が口を開く
『何で生きてるのか分からなくなった。』
『何で生きてるのか?』
『そう、何の為に働いてるのか?
何で作り笑いをしないといけないのか
何で知らない人に税金とかを
払わないといけないのか
何で私は生きてるのか。』
同じだ心の中で思った
『別に彼氏も居ないし
これと言って趣味とか楽しみも無いし
何の為に生きてるんだろって』
同じだった、彼女の言葉一つ一つに謎の説得力
がある同じだから、
『その気持ち少しだけ分かるかも』
思わず口から出ていた
こんな事を言うと逆に反感を買うかもしれない
でも本心だったむしろそれで彼女が死ぬのを
諦めたらそれで良いんじゃ・・・
『だよね!やっぱそう思う!?』
立華が僕の思考を遮るように言う
『だってそうでしょ!?意味なんか無いの
夢もないしただのうのうと生きてて
それが何になるって言うの!?』
共感しなければ良かったそんな事を思ってると
立華はさらに予想の斜め上の言葉を吐き出す
『良いこと思いついた!私と付き合って!』
『はい!?』
なに付き合って!?こんな出逢ったばっかの
俺に!?何を言ってるんだこの子は
『ちょっと待って何をいきなり・・・』
『私さっきから思ってたの
あぁこの人私と同じ目をしてるって』
『同じ?』
『そう!この世界に絶望して
生きる意味を見出せない
そんな感じ!』
彼女の目言葉全てに吸い込まれる
『でもいきなりそんなこと言われたって』
『1年間だけ付き合って1年後一緒に死のう!』
この子は笑顔でとてつもなく
怖い事を言っている
『何で俺が!』
『貴方も死にたいって思ったんでしょ?』
『・・・』
『貴方は私が死ぬのを止めた
1人で死ぬのは確かに怖いし
でも一緒に死ぬのなら楽に死ねそうじゃん?
2人で死ねば怖くないって!』
『嫌でも、ぼくはその、』
つい言葉が詰まる、確かに死にたいと思った
だけど本当に死ぬやつなんて
どのくらい居るのか考えれば分かるはずだ
『私好きな花があって、
スノードロップって言うんだけど
花言葉は貴方の死を望みます。
すごく綺麗なんだけど、散る時がね
凄く綺麗なの。』
彼女の言葉が何故かすっと入ってきて無言で
ただ話を聞く
『貴方も死にたい私も死にたい、どっちかが
死んだらこんな風に死ぬ人もいるんだって
どっか安心するし、何よりも死ぬ事に対して
興味が湧いて来たの。』
まるで悪魔の囁きの様に耳元で話してくる
『少し落ち着いて!』
『私は凄く落ち着いてるよ
ただどうせ死ぬんだし、面白いじゃん?』
『そんな事言われても、』
死ぬ気なんかないそんな事を言いたかったけど
言葉が出てこない
『とりあえずこんな所で話すのも何だし
太一の家行こ!』
『そんな急に!』
『大丈夫いきなり変なこととかしないから!』
コイツはいきなり何を言ってるんだ
『待て待てでも実家だろ!?そんな急に・・』
『大丈夫親には泊まってくるって
元々言ってあるし!』
『イヤイヤイヤイヤ』
とりあえずこの状況は不味いなんとかして
家に帰さないと。
『太一と私、どっちが先に死ねるかな?』
ダメだこの子はそんな事しか考えてない
『わかったからとりあえず場所を変えよう
付き合うとかそんな話はあとでゆっくり
話そう、君の話はその後だ。』
『初めから素直に許可すれば良いのに』
とりあえず会計に行こう
『1万350円です』
『割と行ってるんだ…カードでお願いします』
『ご馳走様です』
『いえいえ』
『ありがとうございました〜』
やるせない気持ちと会計を済ませ店を出る。
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