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家族になりました
あの後お父さんと咲さんが婚姻届を出して、
正式な夫婦になった。
そして、現在、引越し業者が山内家の荷物を部屋に運んでいる。
あの先輩と家族になるのかぁ。
顔はイケメンだけど、性格がちょっとアレなのよね。
私は我が家をうろちょろする引越し業者を横目で見つつ味噌汁をすすった。
「そういえば、咲さんと凛也先輩、いつから家に住むの?」
「ああ、今日からだよ。」
ん??
「まさか今日って言った?」
「言ったよ」
けろりと言うお父さん。
「えーーっ!こ、心の準備できてないよ!せめてあと二日後にしてよ!」
「ははは、いいじゃないか。一緒に過ごすうちに慣れるだろう」
いや、『ははは』じゃないんですけど。
事前に言ってよ!
「ところで、もう七時三十五分だけど大丈夫か」
「え!」
時計をを見ると指しているのは三十五!
「うわぁっ!やばい」
わたしは慌てて玄関に向かう。
「いってきまーす!」
私は学校に急足で向かった。
◯◯◯
「ただいまー」
美術部の活動を終え、帰ってくると
凛也先輩がいた。
「おかえり」
読んでいる本から顔を上げずに言う。
何読んでるんだろ。
ん?植物図鑑?
「先輩、花好きなんですか?」
思わず聞くと凛也先輩は顔を上げた。
「好きだよ」
ついドキッとしてしまう。
いや、その顔で『好きだよ』は破壊力やばいです。
「そ、そうなんですね!実はわたしも花好きなんですよ!先輩は何の花が好きなんですか?」
横に座ると凛也先輩は
「タンポポ」
と言った。
「タンポポ!」
びっくりした。
先輩の好きな花がタンポポだなんて。
「わたしもタンポポ好きなんですよ!」
同じですね、と笑うと先輩は微笑んだ。
「タンポポは陽だまりみたいで綺麗だよな」
「はいっ!」
ニコッと笑うと先輩は
「意外だな、共通の趣味があるなんて」
と呟いた。
「先輩が花が好きなんてわたしも意外でしたよ!」
「……花は裏切らないから」
意味深な言葉にわたしは首を傾げる。
だけど、その瞳が悲しそうで、儚げで、
わたしは何も言えなかった。
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