新しい命の誕生

1/1

90人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

新しい命の誕生

お母様の妊娠がわかってから半年ほど 経った日のこと。 夜、私はお母様と お腹の赤ちゃんに絵本を読み聞かせていた。 「うっ……」 お母様がお腹を押さえて苦しそうな顔をした。 肩で息をしている。 「お母様、大丈夫ですか?!」 「う、生まれる!!」 お母様が苦しそうに叫んだ。 〈あら、赤ちゃんが出てきそうよ〉 セレニテがお母様のお腹を見て言った。 「えぇっ!!」 突然の出来事にわたしはパニックになる。 「どうした、イザベル!!」 お父様が扉を開け放つ。 「お父様、ちょうど良いところに!! 赤ちゃんが生まれそうなんですっ!!」 「何だって!?」 お父様はカッと目を見開きお母様を寝室へと運ぶ。 ローレンが産婆とマリアさんを呼んでくれた。 「お母様、頑張ってください!! ヒッヒッフーですよ!!」 〈なんだヒッヒッフーって〉 お母様は汗だくになりながら頷いた。 「ありがとう、レティ」 「イザベル、大丈夫か!?」 お父様が泣きそうになる。 「大丈夫よ、あなた」 お母様はにっこり笑う。 「さぁ、お嬢様と旦那様は出ていてくださいね」 マリアさんに言われてわたしたちは廊下に出た。 大丈夫だろうか。 わたしはギュッと目をつぶり手を合わせる。 〈無事に産まれると良いな〉 わたしはボスの言葉に頷き 「きっと大丈夫よ」と願いを込めて言った。 「イザベル……」 お父様も廊下を行ったり来たりして落ち着きがない。 しばらくして。 「オンギャァァァッ!! オンギャァァァッ!!」 わたしとお父様は顔を見合わせる。 お父様は嬉しそうな表情をしていた。 恐らくわたしも同じ表情をしているだろう。 「「生まれたっ!!」」 その後に 「オンギャァァァッ!! オンギャァァァッ!!」 とまた泣き声が聞こえた。 ということは、双子!? お父様が寝室に飛び込んだ。 「お父様っ!!」 わたしも後に続くとお母様は 二人の赤ちゃんを抱っこしていた。 赤ちゃんはまだ目を開けていないけどそれぞれお父様の銀髪とお母様の金髪を受け継いでいた。 か、か、か、可愛い!! なんて小さいの。 まさしく天使だわ。 〈きゃぁ、ちっちゃい!!〉 セレニテが嬉しそうにお母様の周りを飛びまわる。 「おめでとうございます。双子のお子様です」 マリアさんが嬉しそうに笑い、 産婆もお祝いしてくれた。 「あぁ、イザベル、ありがとう……」 お父様がお母様を優しく抱きしめる。 お母様は幸せそうに微笑み、抱き締め返した。 ボスも柔らかな笑みを浮かべていた。 今日、わたしに新しい家族ができたのだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加