手紙

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「お子様の誕生おめでとうございます!!」 フロルちゃんが黄色い花束を お母様に差し出しにっこり笑った。 うーん、今日も天使だ……。 「まぁ、ありがとう。フロルちゃん」 お母様は屈んで花束を受け取る。 「ありがとう、フロルちゃん」 お父様もにっこり笑う。 今日は双子の誕生パーティー。 貴族の方を招待して、お母様の出産を祝っている。 お母様が出産してから一週間が経ったわ。 双子の赤ちゃんは男女で男の子がイリス。 お父様の銀髪にお母様の紫水晶色の 瞳を受け継いでいた。 女の子がヴェルデと名付けられた。 お母様の黄金の髪にお父様の緑柱石色の 瞳を受け継いでいた。 ヴェルデが先に生まれたからお姉ちゃんだ。 将来はすごく可愛くなるだろうな。 わたしは大きくなった二人が「お姉ちゃん」と呼んで 駆け寄って来るのを想像して「えへへ」と 笑いを漏らした。 「ふふっ、レティちゃんも嬉しそうだね。 おめでとうレティちゃん」 フロルちゃんが花が咲くように笑う。 「ありがとう、フロルちゃん。 せっかくだから双子を見ていく?」 フロルちゃんは目を輝かせた。 「いいの!?」 「もちろん!」 わたしはフロルちゃんの手を引いて、 二人の寝室へ向かう。 ベビーベッドにイリスとヴェルデが寝ていた。 寝顔も天使っ!! 「可愛いっ!!」 フロルちゃんが小さく悲鳴をあげた。 「分かるっ、可愛いよね!! わたしに弟妹ができるなんて夢みたいだよ!」 「私、一人っ子だから羨ましいな」 フロルちゃんはヴェルデの頬を優しくつついた。 その表情はとても優しい。 「フロルちゃんもヴェルデとイリスのお姉ちゃんになったらいいのよ」 わたしはフロルちゃんに優しく笑いかけた。 フロルちゃんはキョトンとした後顔を輝かせた。 「いつでもわたしの家に来たらいいよ」 「うんっ!! ありがとう、レティちゃん!!」 双子も可愛いけど、フロルちゃんも可愛い!! わたしは悶えたのだった。 ◯◯◯ フロルちゃんがハムスターのようにお肉を 頬張っている。 可愛いなぁ。 「ところで、レティちゃん。 カイルくんとのお茶会は楽しかった?」 ギクッ。 あれから、カイルとは会ってない。 ちょっと言いすぎたかな。 罪悪感を覚える。 「レティちゃん?」 我に返りフロルちゃんに笑顔を見せた。 「うん、すごく楽しかったよ! 紅茶もすごく美味しかったし」 「そっか。私も行きたかったなぁ」 フロルちゃんが残念そうに言うので、 わたしは元気づけようと笑う。 「今度はフロルちゃんも一緒に行こうね」 フロルちゃんは花が咲くような笑みを浮かべて 「うん!」と頷いた。 あの日から二日後に、カイルから手紙が届いていた。 ヴァイオレットへ 軽々しく、『婚約者にする』なんて言ってごめん。 俺たち王家が精霊たちを傷つけたというのに。 謝ることしかできない。 セレニテにも反省していると伝えてくれないか? 本当にごめん。                      カイル いつものカイルはワガママで口が悪いのに 丁寧な文章に毒気を抜かれた。 セレニテにカイルが反省していることを伝えると セレニテは 〈彼が悪いんじゃないわ〜。 悪いのはフォルトゥナよ〉 と笑っていた。 カイルが悪いわけじゃない。 そう思ってるのに。 素直になれない。 もどかしくてわたしは 小さなため息をついたのだった。
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