再会

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再会

「嘘」 わたしはカイルを上から下まで見る。 「えっ、まさかカイルくん?!」 フロルちゃんが驚く。 カイルは気まずそうな顔をしてフードをまた深く被り直した。 「場所を変えよう」 周囲を気にする様子で言ったカイルに わたしは頷いた。 わたしたちは近くの路地に入る。 「あなた、今日誕生日でしょ?  主役が抜け出してきていいの?」 「あぁ、息が詰まるから逃げてきた」 思わず吹き出す。 カイルは変わってないわね。 フロルちゃんも笑みをこぼしている。 「なんで笑うんだよ」 「変わってないなと思って」 ふわりと微笑むとカイルは何故か赤面した。 フロルちゃんがカイルを見てニヤニヤしてる。 なんでだ? 「あの時のことだけど……」 カイルが沈んだ口調になった。 「悪かったよ、軽率だった。王家が精霊 たちにしてはいけないことをしたのに 婚約者になれと言っちまって」 「え!レティちゃんカイルくんと結婚するの?」 キラキラ目を輝かせるフロルちゃん。 「いや、しないから」 わたしはカイルに向き直る。 「なーんだ」 フロルちゃんは残念そうな顔になる。 「わたしの方こそごめん。セレニテが可哀想になっちゃってつい怒っちゃった。」 「せれにて?」 不思議そうなフロルちゃんに今までの経緯を話すと ポカンとしていた。 当然だよね……。 「レティちゃんが、精霊視えるなんて」 「今まで言ってなくてごめんね」 フロルちゃんに言わなかったのはわたしが特別な人間だと知られるのが怖かったから。 フロルちゃんが今まで通り 接してくれるか分からなくて怖かった。 「まぁ、予想はしてたけどね」 けろりとした様子で言うフロルちゃん。 「えっ」 拍子抜けする。 「レティちゃんは魔獣と話せるくらいだもん。 そのほかにも不思議な力を持ってても おかしくないよ」 「クッ……アハハッ!」 カイルが吹き出した。 「なんで笑うのよ」 わたしはカイルを軽く睨みつける。 「フロルも規格外だと思ってるんだな」 「規格外ですいませんね!」 わたしが言うと二人が声を出して笑った。 こうして、わたしたちは 三年ぶりの再会を果たしたのだった。           
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