親ばかなお父様

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親ばかなお父様

プラチナブロンドの髪をハーフアップにし、 少しキツい印象を与える灰色の瞳。 まるで、物語に出てくるお姫様のようだ。 「お迎えにあがりました」 優雅に微笑む美少女さん。 わたしとフロルちゃんはその美貌に見惚れていた。 「ゲッ。アリス」 げんなりした様子で言ったカイル。 「知ってる人?」 そう聞くとカイルは 「あぁ。俺の幼馴染のアリスだ」と答えた。 幼馴染なんだね。 「はじめまして。わたくしはアリス・オリヴィア。 オリヴィア大公爵の娘です」 綺麗な仕草で淑女の礼をするアリス様。 って、大公爵家のご令嬢なんですか!? わたしは慌てて挨拶をする。 「はじめまして。アリス様。 わたしはヴァイオレット・アゼリアといいます。 アゼリア公爵の娘です!」 優しそうな方だし、お友達になりたいな。 そう思いながら微笑む。 「わ、私はフロルです!」 フロルちゃんが緊張したように ペコリと頭を下げると アリス様は一瞬蔑むような目をした気がした。 気のせいかな? 「カイル様がお世話になりました。 さぁ、殿下。帰りましょう」 アリス様がにっこり笑う。 カイルはため息をつき 「分かったよ」と口を尖らせ、こっちに向き直った。 「ヴァイオレット、フロル。また会おう」 微笑むカイルにわたしは笑みを返した。 「今日はありがとう。また会えて嬉しかった」 嬉しそうに笑うカイル。 「またね、カイルくん」 フロルちゃんがニコニコして手を振った。 カイルは手を振り返し、馬車に乗り込んだのだった。          ◯◯◯ 「アリスさん、綺麗だったなぁ」 フロルちゃんがうっとりしたように言う。 「そうだね、わたしもあんな美人になりたい〜」 すると、フロルちゃんは勢いよくこちらを向いた。 「アリスさんも綺麗だったけど レティちゃんも負けてないからね!! むしろレティちゃんの方が勝ってる!!」 「ありがとう、フロルちゃん。 フロルちゃんも可愛いよ」 わたしは軽く受け流し、 フロルちゃんへの本心を口にする。 「分かってないね……」 「え? なんか言った?」 「いや、何でもない……レティちゃん、頑張って!」 親指を突き立てるフロルちゃん。 何を頑張れと? 「あ、うん」 わたしは訳の分からないまま頷いた。 家に帰り、カイルと再会したことを話すと お父様はガーンと効果音がつきそうな顔をした。 「な、なんだって。カイル殿下と再会した?」 「まぁ、ロマンチックね」 お母様は楽しそうに笑う。 双子の弟妹たちはおもちゃに夢中だ。 そして、何故かボスも交じっている。 「アリス様という方がお迎えにきて すぐ帰っちゃいましたけどね」 お父様はホッとしたような表情になる。 ん? 待てわたし今日カイルに敬語使ってない! つい童心に返って呼び捨てにもしちゃった! カイルといると何故か自然体になっちゃうんだよね。 わたしは紅茶を一口飲んだ。 「ふふっ、懐かしいわ。あなたが森でボスに攫われた ときに、カイル殿下と会っているのよね」 「はい。あのときはワガママな人だと 思っていましたが今日会ってみると随分柔らかくなっていました。」 すると突然、お父様が立ち上がる。 「レティは嫁にはやらんっ!!」 は? 「何を言ってるんですか。お父様」 わたしは呆れながら言う。 「レティはまだ十歳だぞ…… カイル殿下に嫁がせてなるものか!!」 え?! 「あら、あなた。もう十歳よ。 結婚できる十八歳まであと八年だわ」 のほほんとした口調のお母様。 「ちょっと待ってください。なんでわたしカイルのお嫁さんになることになってるんですか?!」 「うふふ、気にしないでレティ。お父様は レティを手放したくないのよ。あなたは好きな人と結婚すればいいわ」 お母様はにこりと笑う。 「うぅ……レティは嫁にやらん……」 何故か泣いているお父様。 なぜ、わたしがカイルと結婚することになってるの? お父様は親ばかだな。 改めて感じつつ、わたしは可愛い 弟妹たちのもとに駆け寄ったのだった。
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