白き令嬢を妬む者

4/7

90人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
「アリス様! お誕生日おめでとうございます! これ、プレゼントの薔薇です!」 「お誕生日おめでとうございます! これ、プレゼントのネックレスです!」 「プレゼントのドレスです!」 アリス様に、貴族令息達が群がっている。 わたしだったらめんどくさいけど、 アリス様は笑顔で応えていた。 アリス様、素敵…。 「おい、お前ら どういうつもりだぁっ 俺の妹に手を出すなっ!」 アルヴァン様が令息達からアリス様を守るように 腕を広げている。 アリス様は結婚できるのだろうか……。 〈アリスったら、すごい人気ねぇー〉 セレニテは空中を泳ぐようにくるくる回った。 「ほんと、すごい人気。わたしなんかは全然だもん」 すると、セレニテは不思議そうな顔をする。 〈何言ってるの?ヴァイオレット、 あなたを恋する眼差しで見つめている男の子が たくさんいるわよ?〉 周囲を見渡すけどそんな人いないよ? 姿を隠したボスとセレニテは 同時にため息をついたのだった。 「お前、マジか……」 隣にいたカイルがそんなわたしを見て呆れている。 「な、何ですか、その目は…」 「いや…なんでもない…。それよりもっと食べろ」 わたしの皿に小さなケーキが載せられた。 「今日はやけに優しいんですね」 「…お前、いつも俺をどんな目で見てるんだよ」 口を開きかけて、 アリス様が立っているのに気付いた。 「アリス様!!」 カイルも振り向く。 「ふふふ、楽しそうですね。 宜しければわたくしも混ぜて頂けませんか?」 「もちろんです!」 やった!お友達になれるチャンス! 「ヴァイオレット嬢は明るくてとても 素直ですね。わたくしとは正反対だわ」 え?最後の方なんて言った? 「ヴァイオレット様、せっかく知り合ったのですから 仲良くしましょうね」 アリス様が花が咲くように笑い、わたしの手を握る。 はうっ!! 「はい!!アリス様! これからよろしくお願いします!」 「俺を相手にしているときとは態度が違うな」 ムスッとした表情のカイルを見て アリス様はふふふと笑う。 「カイル殿下、拗ねていらっしゃるようですわね」 え?カイル拗ねてるの? 「そうなんですか?」 「す、拗ねてなんかねーよ!」 「そうですか、わたくしの勘違いかしら」 意味ありげな目をカイルに向けるアリス様。 カイルはプイッと顔を背けた。 「ふふふ、それでは二人とも パーティーを楽しんでくださいね」 そう告げるとアリス様は王妃様と お母様のもとへ向かっていった。 わたしは胸のドキドキを抑えるため 紅茶を口にした。 うん、いい香り。 あれ、何だか眩暈がしてきた。 あれ、あれれ? シャンデリアが下がった天井が 回っているかのような錯覚。 「ヴァイオレット? 大丈夫か?」 カイルの声がノイズ混じりに聞こえ 視界に映る光景がぼやけて見える。 「ヴァイオレット!!」 誰かの声が暗闇の世界に響いた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加