友達

1/1

90人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

友達

「と、友達だ、と?」 お父様がフラついた。 「はい!友達です!!」 「あら、そういえばレティには友達が いなかったわね」 お母様がそう言って、しばらく何かを考えているようだった。 「いいわ、レティ!友達を作りなさい!」 にっこり笑うお母様。 「い、イザベル!?」 素っ頓狂な声を上げるお父様にお母様が ため息をつく。 「あなた。レティはもう七歳よ。可愛いからって いつまでも屋敷に閉じ込めておくなんて社会勉強にならないわ。それにレティがかわいそうよ」 そう言ってお父様を見上げるお母様。 お母様、ありがとう! 「い、いやしかし……」 お父様は私を見た。 私は瞳をうるうるさせてお父様を見上げる。 「ダメですか……?」 どうよ! お父様は一瞬で表情を緩ませ頷いた。 「よし、レティ、お父様と一緒にお出かけしよう!」          ◯◯◯ 「わぁっ!雑貨屋さんや、本屋さん、花屋さん! たくさんお店が並んでますね!」 西洋ヨーロッパ風の店構えに私は興奮を 隠せなかった。 私は今、お父様と城下町に来ている。 すると、お父様が私を抱え上げ、花屋に入った。 「ジョン、いるか?」 わぁ、地球では見なかった花がたくさん 置いてあるよ! 目をキラキラさせていると 「あぁ、アルフレッドか。」 店の奥から茶髪に同色の瞳を持つ美しい男性が出てきた。 「久しぶりだな、この子はわたしの娘だ。ヴァイオレット、挨拶を」 お父様の言葉に私は頷いた。 「はじめまして。ヴァイオレット・アゼリア といいます」 「俺はジョンだ。よろしくな。」 にかっ笑うジョンさん。 そして、じーっと私を見つめた。 「この前は赤ん坊だったのに、大きくなったなぁ」 「そうだろう!天使のように 愛らしくなっただろう!」 お父様が親バカを発揮する。 「お父様ってば」 苦笑いを浮かべると、 店の奥から女の子が出てきた。 肩まである茶髪に赤い瞳の可愛らしい女の子だ。 両サイドの髪を三つ編みにしている。 年齢はわたしと同じくらいかな。 「お父さん、その子、誰?」 キョトンとしてわたしを見つめる女の子。 か、かわいいっ! 小動物みたい!! 翠にも劣らない可愛さだよ! 「フロル。挨拶しなさい。今日からお前と友達になる、公爵家のお嬢様だ。」 フロルちゃんは、目を見開いた。 「公爵家のお嬢様なの?!」 「そうだよ、ほら挨拶をしなさい」 優しく言うジョンさんにフロルちゃんは ハッとしたような表情になり、 「はじめまして、えっと……」 と口籠った。 そうだ、名前を言ってなかったね。 「はじめましてフロルちゃん。 わたしはヴァイオレットっていうの。よろしくね」 にっこり笑うとフロルちゃんは顔を赤らめた。 照れてるのかな? 「わたしは、ジョンの幼馴染で親友のアルフレッド。 ヴァイオレットの父親だよ。よろしくね」 お父様はにっこりした。 え!お父様ジョンさんの幼馴染だったの? またもやフロルちゃんの顔が赤くなる。 お父様美形だからね……。 「よ、よろしくお願いします。お嬢様と、公爵様」 堅苦しい言葉にわたしは苦笑した。 「いいよ、いいよ、そんなに堅くならないで。 わたしのことはレティと呼んで。」 にっこり笑い手を差し出す。 「わたしね、ずっと友達が欲しかったのよ。 だから、わたしと友達になって!!」 子供っぽく笑うとフロルちゃんはポカンとして、 それから花が咲くような笑顔になった。 「うん!!」 フロルちゃんはわたしの手を握った。 こうして、わたしは 生涯の友、フロル・ミリーと出会ったのだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加