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「茂木、今日はちゃんとノルマ達成出来るまで帰さないからな」
俺の元へやって来たこの男にそう言われた。
入社して一年間殆ど毎日言われ続けられているセリフだ。
「はっ、はい」
今は従うしかない。
部長のこの佐々木に。
「だったら、早く掛けろ」
「はっ、はい」
強烈な威光を放たれた俺は電話番号を確認し押した。
電話の発信音が変わった。
もう直ぐ繋がる。
・・・・・出た。
女の声だ。声のトーンからして主婦か?
「もしもし、お忙しい所申し訳ありません。山田様の御自宅のお電話番号でお間違いないでしょうか?・・・・・はい私、ダイス・コミュニケーションズの茂木と言う者です。現在、御契約中のインターネット通信の見直しを御検討して頂きたいと思い、この度、山田様にお電話させて頂きました。・・・・・」
出た。一番多い謳い文句。家は結構です。
「そうですか。ではまた機会が御座いましたら、ご検討の方宜しくお願いします。・・・・・はい、失礼致します」
そう言って、俺は電話を切った。
「ちっ」
それを見た直後、佐々木が盛大に舌打ちをした。
「兎に角、沢山契約取れ。ノルマを大きく超えても構わん。さっさと次掛けろ」
そう言って、佐々木は去って行った。
俺はその後ろ姿を睨んだ。
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