第一章 日常

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それが出来たら、こんな苦労は無いんだ。 だったら、自分が契約取ってみろ。 しかし、俺は感情を抑えて言われた通り、また電話を掛ける家庭を探した。 確かに何も事情を知らない向こうにとってはこんな電話、迷惑なだけだろう。 俺が何も知らない向こうの立場だったら、そう思うだろう。 しかし、こっちの立場の人間はそんな事お構いなしに、心を鬼にして闘わなくてはならない。 そうしなければ、この先この会社にいられなくなる可能性だってある。 「もしもし、お忙しい所申し訳ありません。福田様の御自宅のお電話番号でお間違いないでしょうか?・・・・・はい私、ダイス・コミュニケーションズの・・・・・」 俺は毎日一体、何をやっているんだろう。 これが俺のやりたかった仕事なのか? ・・・・・いや、違う。 そうではない。 取り敢えず、一人で食っていける為にあの時どこでも良いから就職しなければならなかった。 周りがそういう風潮だったのだ。 それが今でも惰性と義務で続いているだけだ。
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