プロローグ

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家を出たころにはまだ陽は道を照らしていたが今はすっかり、沈んでしまった。 三カ月に一度は実家に帰っている。 ずっとアパートにいると憂鬱になるからだ。 いや、楽が出来るからだが本音だ。 何もしなくても飯は出るし、電気代も節約出来る。 洗濯もやってくれる。まさに天国だ。 この辺は他の家よりも恵まれていると思う。 しかし、そんな環境にいる俺だが今、幸せかと訊かれれば疑問視が付く。 いや、不幸だ。 明後日もあの地獄に行かなくてはならないと思うと、今から憂鬱になる。 しかし、行かなくてはこの先、食っていけないし、辞めても今の自分の経験とスキルでは転職出来るかどうかも分からない。 このまま一生あそこに居座るしかないのか? ・・・・・いや、絶対にそれはない。 タイミングが合えば、直ぐにでも辞めてやる。 日々、同じ事の繰り返しに生きている実感がしない。 俺は一体、毎日何をやっているのだ? 本当に世の中の役に立っている仕事をしているのか? 毎日思っている事だ。 厭世にもなりかけている。 ・・・・・誰かに言いたい。 誰かに頼りたい。 親でも良い。 しかし、もう泣訴できる歳でもないし、それは俺のちっぽけなプライドが拒む。 今年で二十四歳だ。 自分で何とかするしかない。 親にも迷惑は掛けられない。 「・・・・・やるしかないか」  立ち止まり、そう呟いた。
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