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「ハッ、クシュン」
肌寒くなってきた。
まだ、四月だ。
夜はまだまだ冷え込む。
長袖一枚で外に出たのは間違いだったかもしれない。早く天国へ帰ろう。
・・・・・やるしかない。仕事があるだけまだマシかもしれない。
もっと大変な想いをしている奴なんて世の中には巨万といる。
・・・・・そうだ。俺はまだ幸せな方だ。
そう自分に言い聞かせ歩き続けていたら、天国はもう目の前だった。
明日までの天国だ。
俺はどう過ごそうか考えながら、玄関の鍵穴に鍵を入れ、扉を開け、足を踏み入れた。一階の十二畳のリビングには親二人が健康番組を観ている。
しかし、俺は何も言わずに二階の部屋までゆっくり歩いた。部屋に着くと、俺は明かりを点け、ベッドの上に仰向けで寝転んだ。
乗った瞬間にベッドが軋むこの音を聞くのも三カ月ぶりだが相変わらず、変わっていない。
このベッドは中学生の時、親に買って貰った十年来の友だ。
ふと、頭を後ろに傾けてみた。
俺が高校生の時、進路の事で親と喧嘩して、こいつに八つ当たりして殴ってつけた跡もやはり消えていない。
これを見る度にあの時の事を思い出す。
苦い思い出だ。
今では後悔している。
世間ではこういったのを反抗期に良くみられる若気の至りと言うのか?
だったら、誰にでもある事だから仕方のないと思いたいのだが、やはりこれを見る度に胸が痛い。
しかし、十年来の付き合いのこの愛器を捨てようとは思わない。
捨てたら、俺の今まで歩んだ人生が否定されるような気がするからだ。
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