2人が本棚に入れています
本棚に追加
無意識な想い
その日から僕は無意識に五十嵐蓮の姿を目で追うようになっていた。
そんなこんなで約半年が過ぎようとしていた。
「なぁなぁ」
!話しかけられた⁉︎五十嵐蓮に‼︎
「な、何だよ」
「いや、一緒にボウリング行かないかなって思って」
ボウリング?誘ってる?五十嵐蓮が?僕を?そんなまさかな事が起こるはずない。じゃあこれは幻聴?
「あっ!因みに幻聴じゃないよ」
まるで心の中を見透かされたみたいに言われて恥ずかしい気持ち半分、誘ってもらえて嬉しい気持ち半分でごっちゃごちゃな気持ちになって焦っていると、
「いやいやいや。蓮、止めてやれよー。花部さん困ってんじゃんw」
向こうで馬鹿みたいに騒いでた奴らがそんな事を言うものだから馬鹿にされたと思った僕は咄嗟にこう言ってしまった。
「行く!」と。後に後悔したのは言うまでもない…。
ボウリング当日、僕は悩んだ。それも服装に。こんな事は生まれて初めてだった。かれこれ1時間くらい悩んだ末、ちょっと動きやすいキュロットスカートに姉から貰ったオープンショルダー。
これらの服を姉から譲り受けた時に「この服達には悪いけど、多分もう、日の目を見ることはないだろうな」と思った服達だ。
はやる気持ちを抑えきれずに集合時刻の約30分前に到着してしまった。何故か髪型を気にしたり、服装を心配したりといつもの僕じゃ有り得ない事を心配していると
「うっわ!早くね」
と五十嵐蓮の声がした。急いで振り返り同時に正直引くほど驚いた。
彼がとてつもなくオシャレすぎる事に。
「俺さ、結構楽しみにしてたんだよね。…花部さんとボウリング行けること。」
ここで五十嵐蓮が爆弾を投下してきた。冷静を。冷静を保たなくては…
「あっそう」
内心すっごく後悔した。本当になんであんな言い方になったんだろうって。でも出てしまった言葉は取り消すことは出来なくてちょっと泣きそうになる。
こんな僕の性格には自分でも嫌気がさす。
そして誘われたクラスメイトがどんどん集まってきて、ボウリング場へと出発することになった。
到着してみんなが準備している中、僕は靴も履き替えずに1人椅子に座ってスマホを見ていた。つまり僕は一切投げないつもりでいた。だって僕が投げた所で見ようと思う人どころか見たいと思う人なんていないだろうし?
「花部さんは?」
ゲームに集中していた僕に話しかけてきたのは五十嵐蓮。
へ?
「…何がですか」
「いや、投げないのかなーって思って」
「いやいやいや無理だろ。花部さんにはw」
は?(怒)
「そうそう花部さんには投げれないって!」
ブチッ
今何か僕の中で音を立てて切れる音がした。
「…る」
「え?」
「なんて言った?」
「投げるって言ったの!」
あーもう。自分のこう言う所嫌いだ。
「いや無理してやらなくても。倒れなくてこの場が寒くなるだけだから」
言ったな?
ヒュッ
カコーン‼︎
「ス、ストライク…」
「なんで⁉︎出来ないんじゃ無かったの⁉ゲームの話しかしてないし」
「出来ないって言ったの誰?」
本当先入観って怖いね。なんでゲームが好きだったら運動が苦手だと思うの…
「花部さん!コツ教えて!」
「コ、コツ⁉︎」
ないよそんなもの!
その日はすっごく楽しかった。今までにないくらい。
最初のコメントを投稿しよう!