2人が本棚に入れています
本棚に追加
恋って…?
唐突だが、恋ってなんだ?クラスの女子が日頃騒いでいる彼氏が出来たとかできてないとか。僕は生まれてこのかたそう言うものに興味を示した試しがない。
だから、そういう恋とかの経験値ゼロで今まで生きてきた。
自己紹介が遅れました。僕の名前は花部爽(はなべそう)。兄と姉の三兄妹の末っ子。男子みたいな名前だが一応女子。親からつけて貰ったこの名前には「この子には爽やかに生きていって欲しい」と言う想いが入っているらしいが、一人称も『僕』だし、選んで着る服も姉ではなく兄のお下がり。ゲームが好きで恋バナとか少女漫画とかに興味を一切示さない男子みたいな、名前と正反対な根暗な性格の女子になってしまった。
さて、話に戻ろう。最近高校生になった僕だが、クラスで『恋』とか『好き』とか言う言葉をよく聞くようになってからか段々と意識してくるようになった。かと言って好きな人がいるのか、と聞かれると断固いない。男子みたいな性格だからといって、女子を好きになるわけじゃなくて、(多分)僕も男子を好きになる(はずだ)。
恋、について少し知ってみたくなりゲームの攻略情報を話している浅野浩一(あさの こういち)に好きについて聞いてみることにした。
「なぁ、好きってなんだと思う?」
「いや知らねーよ」即答。………うん。コイツをアテにした僕が馬鹿だった。
「何。急にどしたし」
目線はゲームに向けながら聞いてくる浩一。
「いや、気になっただけ。ごめん気にせんで」
「…じゃあ、あっちにいる女子が、見てる方向見てみ。」
ん?あっちに何があるって言うんだよ。
あぁ。五十嵐蓮(いがらし れん)。クラスで1番キラキラしてる、僕とは正反対の性格のいわば陽キャ男子か。アイツがなんだよ。一応言っておくと正反対だからって言うこともあって、僕はアイツが苦手…嫌いだ。
バチッ
「⁉︎」
クルッ
なんでこっち見たんだよ。意味わかんないんだけど!しっかり視線が交わって挙動不審になる僕。
「…ちょっとオレ、トイレ行ってくるわ」
僕が五十嵐蓮と目が合ったのを分かった上で馬鹿が席を外す。
するとすぐその五十嵐蓮がこっちに向かって来ていた。
なんでこっち来るんだよ⁉︎と心の中で毒づく。
「…何か用事ですか?」
案の定、五十嵐蓮は僕の前で立ち止まった。
1秒でも早くキラキラ民の中に戻ってくれ。頼むから。というのは口が裂けても言えないけれど、心の底からそう望む。そして、キラキラ民の方向をチラリと見るとさっきまで五十嵐蓮と喋っていた女の子達が僕を睨んでいた…。
僕何もしてないじゃん…と心の中で口を尖らす。
「それ、なんの絵?」
今僕が描いてたのはあるゲームのキャラ。どちらかと言うと自分で言うのもアレだが絵は得意な方だ。だからと言ってコイツに見られるのは何か癪だ。
「別に。なんでも良いですよね?」
コレはキツすぎたかもしれない、と少し反省したのも束の間。
「それさ、ゲームのキャラじゃない?」
うん。言うなよ。
「はぁ。そうですが。」
僕は、「わざと冷たく返して早くあっちに戻って貰おう」作戦を実行していた。
「へー!やっぱり!すっげぇ上手なのな!」
ポンポン
ドキッ
「じゅーん!早く戻ってきてはなそー?」
「おー。じゃね花部さん」
キラキラ民の女子が五十嵐蓮のことを呼んでくれたお陰で戻っていった、が。
バクバクバク…
何故か自分の心臓が今までにないくらい異常な速さで打っていた。
それが僕の人生の無自覚なまま進んでゆく恋のスタートだった。
最初のコメントを投稿しよう!