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ナンバ
テレビを観ていると、CMに『ナンバ』という言葉が表示された。何かのアニメが実写化される宣伝だった。
それを観ていた娘 ── また登場 ── が「ナンバ走りって知ってる?」と訊いてきた。
〈最近、エッセイというより『歴女のプチ面白いこと』になりつつあるような……〉
「なんば? と言えばグランド花月しか知らん」
「違う! カタカナでナンバ。江戸時代に流行ってた、そういう名前の走り方があるんだよ」
「何それ? 初めて聞いたけど」
「超効率の悪い走り方なのに、その当時は平民の移動手段は走るしかないから、長距離を疲れずに走る走り方が開発されたらしいよ」
「へぇ~。どんだけ走っても疲れないの?」
「私はそれで走ったこと無いから分からんけど、昔はみんなその走り方してたんじゃない?」
「昔の人ってすごいね。で、どうやって走るの?」
「同じ側の腕と脚を同時に出すの」
「……どういうこと?」
「だから、右脚を前に出したら、普通左腕を前に出すじゃん。それを左じゃなくて右腕を前に出すの」
「こう?」
星がやってみた。こ、これは! 緊張した小学生が行進の時に手と足を同時に出すやつ。
「そんなバカな。走りにくいじゃん。余計疲れないの?」
「バカでしょ? でもこれが当たり前にやられてたから面白いよねぇ」
星はもう一度やってみた。
「これ、ラクダじゃん」
ラクダの歩き方は同じ側の前足と後ろ足を同時に出すのだ。だから左右に揺られて乗り心地が悪いのである。こういう知識はスッと出てくる星。
後でナンバ走りについてググったら、本当にその走り方をしていたのか分かっていないようで、ロマンのある話だと思った。
今日はここまで🙋♂️
2022.4.2
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