ヒーローになりたかった黒猫

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「マカ、今のはウサビロウのことを言ったんだよ。あとな、何度も言うけど『トンチンカン一味』は悪の集団じゃない。オマエたちも知っているだろ?」  ウサビロウは何かを勘違いしているようだが、『トンチンカン一味』というのは悪の集団ではない。  オレたち3匹が住み込みで働いているところだ。  かつてのオレのように身寄りのない子どもたちの生活を助けるための仕事を主に行っていて、服や食料品を届けたりしている。  だが、頭領のトントン母さんがとくに力を入れいているのは本を読み聞かせたり、劇を見せて楽しませたりすることの方だ。  その劇で悪役として暴れるのが相当楽しかったのだろう。  ウサビロコウはあれからずっと自分を悪の組織の一番手と思ているらしい。 「今は確かに悪の組織ではない!だが!オイラがどんなヒーローも震える大悪党集団に変えてやるんだ!」 「まさか、にゃんこ戦隊すら倒そうと思っているのかよ?」  チラリと一瞬、過去にオレを助けてくれたヒーローの顔が浮かんだ。  優しい瞳で見つめ、頭を撫でてくれた彼にどんだけ救われただろうか。  そんなオレの思いを知ってか知らずかウサビロコウは意地の悪い笑みを浮かべた。 「当たり前だ!伝説だのレジェンドだの言われているが、オイラは認めないぞ!」  チリっと胸に痛みを感じた。  何も知らないコイツがあのヒーローを馬鹿にしていいはずがない。 「……そんなの、おまえに出来るわけないだろ」  いつもなら聞き流すのに今回は出来そうにない。  自分のことならまだしも、彼を侮辱するなんて例え仕事仲間でも許せなかった。 「ナイト!『やる前からできない』なんて決めつけるなよ!オイラはなぁ……」 「やる前から決まってることだってあるんだよ!」  言っても仕方ないことなのに感情が抑えられなかった。  いつもと違うオレの様子にウサビロウは目をまん丸にして驚いている。  マカもどうしたらいいのか困った顔をして、何も言えないようだ。  オレは思わず、その場を走り去ることしかできなかった。
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