ヒーローになりたかった黒猫

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 あれからどれだけ時間がたったのだろうか。  ほんの少しかもしれないし、かなりたっているのかもしれない。  カーテンも閉め切った真っ暗な部屋では時間の感覚なんてあてにならないものだ。  ベッドに横になり、ただひたすらあのヒーローのこととウサビロコウの言葉をぐるぐると考えていたら眠ることすらできなかった。  そんな時、ドアをノックする音が聞こえた。  夕飯の準備が出来たのを頭領か仲間の誰かが伝えに来たのかもしれない。  だけど、あんなことがあった後で誰かに会う気持ちにもなれず無視を決め込んでいると勝手にドアが開き、誰かが入ってきた。  ……いや、そんな勝手なことをするヤツなんて、オレが知っている仲間で一匹しかいない。  オレは起き上がると、その主を睨みつけた。 「入っていいと言った覚えはないぞ。ウサビロコウ。」  オレが声をかけるとビクリと耳を立てて驚いていたようだったが、すぐいつもの自信たっぷりの憎たらしい笑顔に戻った。 「起きていたなら、ちゃんと返事をしろ!頭領がごはんの準備ができたとお待ちだ!」 「……悪いけど、今日はお腹が空いていない。先に食っててくれ。」  お腹が空いていなのは嘘。  ただ空腹を満たすより、ウサビロコウと話をしたくない思いが勝っていた。  食事を用意してくれていた頭領には申し訳ないとは思うが、どうしても一緒に食卓を囲む気にはなれない。  オレはまたベッドに横になり、狸寝入りを決め込もうとした。  だが、ウサビロコウは部屋から出ていく様子がない。 「……おい、寝れないだろ。早く部屋から出てけよ」  目も合わせず声をかけるが、まだ近くにいる気配がする。  黙っていられてはこっちもやりにくい。  チラリと気配のする方に目を向けると、いつもの笑顔でなく本当に申し訳なさそうにコッチを見つめる赤い目があった。
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