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しばらくは何かを言おうとしているのか口を開けては首を振って黙ることを繰り替えているようだった。
「……なあ、ナイト。オマエはヒーローに助けてもらったことがあるのか?」
漸く、アイツが発したのはいつもより弱々しい声。
少し震えているようにも感じた。
こんな深刻な顔をして、何を急に言い出すのかと思えば……
「……オマエに関係ない」
オレはどんな顔をしていたのだろう。
怒りか呆れか、それとも嘲りか……
少なくとも発した言葉はいつもより低く重い音になっていたのが分かった。
会話を早く終わらせたい。
ただそれだけだった。
だけど、ウサビロコウは静かに口を開いた。
「オイラはない」
いつもの明るさなどどこに行ったのか。
悲しそうな無気力な……それでいてはっきりとオレの意識に刻まれた音。
暗い部屋でもはっきりとわかる赤い目が必死に何かを訴えていた。
「オイラや家族がつらくて死にそうだったときに、目の前にいたヒーローは助けてくれなかった。そのせいでオイラ以外の家族はみんな死んじまった」
―――え?
一瞬、頭が真っ白になった。
ヒーローが困っている者を助けなかった?
「そんなはずはない」
そう言い返そうとしたが、怒りに震えるウサビロコウを見たら言葉を発することが出来なかった。
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