ヒーローになりたかった黒猫

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 そういえば……  コイツが『トンチンカン一味』に来た時に頭領に聞いたことがあった。  ウサギは静かな生き物のはずなのに、どうしてウサビロコウはこんなにうるさいのか。  確か『誰も助けてくれなかったから、必死で声を上げるしかなかったらしい』と大事な部分を省いた答えだけが返ってきたのだった。  そうか。  頭領の言葉はそういう意味だったのか。  たった一匹になっても生きていくため、身につけた能力だったのか。 「アイツらは見える範囲で、しかも利益があるやつらしか助けないって知ったんだ。だからオイラはヒーローを許さねえ」  確かに、この世界にはたくさんのヒーローがいる。  その中にはウサビロコウが見たようなヤツだっているかもしれない。  ……だけど、そうじゃないヒーローだって確かにいた。 「……でも、にゃんこ戦隊は……オレを救ってくれたヒーローは違う!身寄りもない助けたって何の得もないオレを助けたんだ……だから……」  気が付けば、ウサビロコウの顔がゆがんで見えた。  いや、オレが泣いていたのだ。  ポトリポトリと布団の上に涙のしずくが落ちてシミを作っていく。 「……ナイトは助けられたことがあったのか……」  グスッと、鼻をすする音がした。  もしかしたら、ウサビロコウも泣いていたのかもしれない。  だが、次に顔をあげたときはいつもの自信満々な笑顔のアイツが目の前にいた。 「うん。ならナイトを助けたヒーローは許す。でもそれ以外のヤツらは許さねえ!」  ウサビロウがなぜヒーローを憎んでいるのか。  オレも知ろうとしなかった。  きっと同じようにウサビロウはオレがどうしてヒーローを大事に思うのかも知らなかったんだ。  自分のことしか考えず、勝手にウサビロコウを悪者にして不貞腐れていた自分が恥ずかしい。 「……ウサビロウ、オマエの過去、何も知らなかったのに怒ってごめん。」 「オイラもナイトのこと知らなかったからな!ごめんな!」  一緒にいたはずなのに、ずっと知らなかった。  家族のようでずっと他人だったオレたちが、初めて心を許し合えた気がする。
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