ヒーローになりたかった黒猫

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 そんな空気を壊すようにすごく良いことを思いついたと、ウサビロコウは目を輝かせた。 「なあ!ナイト!オマエはこのトンチンカン一味でヒーローになればいいんだよ」  ……はぁ?  さすがにオレもポカーンと口を開くことしか出来なった。  昼間に自分が悪の組織にしようとしてたことをすっかり忘れているのかもしれない。 「利益のある連中しか助けないニセモノのヒーローなんかに負けない誰にでも手を差し伸べることのできるヒーローになれよ!」  なんだそれ。  悪の組織の次はヒーローかよ。  相変わらず言っていることがちぐはぐでおかしなヤツだ。  ―――でも、確かにそうだ。。  オレに出来ることなんて大したことじゃないかもしれない。  身寄りのない子たちに頭領たちと一緒に本を読んでやったり、明るくなるような劇を見せることだけかもしれない。  みんなが憧れる強くて頼りがいのある人気者のヒーローじゃなく、困っている誰かをそっと元気づけられるそんな存在にならオレにだって……。 「そしたら、オイラはマカと一緒にニセモノのヒーローをぎゃふんと言わせる大悪党になってオマエを助けてやるからな!」  もっと意味が分からねえよ。  オレがヒーローでウサビロコウは大悪党かよ。  同じ組織の仲間なのにめちゃくちゃじゃないか。  オレは思わず笑ってしまった。 「……ウサビロウのくせに生意気だな」  オレが笑ってそう言うとまるで「なんだよ」と、言いたげにウサビロコウは睨んできた。  自分がおかしなことを言っているのに、まったく気が付かない。  そんなおバカなコイツがヒーローを倒そうなんて無茶だろう。 「オマエとマカだけで、なれるわけないだろ。もっと頭が使える奴が必要じゃないか?」  オレはウサビロコウのような笑いを真似してみる。  一瞬、アイツは怯んだ顔をしたが、すぐにオレに噛みつくように文句を言い出したが恐くも何もない。  コイツは確かにバカだ。  だけど、それ以上にオレもバカだったらしい。 「オレは誰でも助けるヒーローであり、ニセモノのヒーローを懲らしめる悪党になってやるよ」  めちゃくちゃなことを言っている自覚はあった。  だけど、そんな面白いこと一緒にやってくれる仲間なんてウサビロコウ以外にいないだろう。  オレの言葉を聞くとウサビロコウも嬉しそうに笑った。  ―――そう。  オレたち正義の大悪党『トンチンカン一味』はここから始まるのだ。
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