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生まれたばかりの弟君には悪いが、俺も彼を他の人間に渡すつもりはない。
「シーシャ、そろそろ仕事にもどれ」
「キスしてくれなきゃ行かない」
「はいはい」
俺は背の高い彼に合わせて少し上を向き目を閉じた。
フレイは俺の顔を大きな手で騎士たちから隠してそっと口づけた。
「いってらっしゃい、ご主人さま」
「また後でね、フレイ」
毎日彼にキスされるだけで、俺はどんなに辛い仕事も頑張れた。
そして彼も同じ気持ちだったら嬉しい。
俺からもフレイに口づけると、彼はとろけるような笑みを見せた。
騎士団員たちにも手を振って執務室を出る。
さあ、残りの仕事をさっさと片付けよう。
そしてフレイと二人で暮らす離宮に帰るのだ。
いま思えば、俺は長いこと彼を勘違いしていた。
勝手に、自分は嫌われていて、捨てられたんだと思っていた。
そして復讐するように彼を奴隷としてこき使った。
だが彼は、心のなかでは俺を愛し続けていた。
あんなに振り回したのに、ずっと愛し続けてくれていたのだ。
きっと彼ほど俺を深く愛してくれる人間は二度と現れないだろう。
だから今度は大事にしよう。
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