序章 影狩の夜に

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「あの馬鹿……」 手元の時計を確認する。 長い秒針が、正確に時を刻み12の文字を通り過ぎた。 時刻は深夜二時丁度。 の毎度の遅刻にも慣れたが、時間通り、いや指定された時間より最低でも五分は早くに到着するこちらとしては、寒さもあってやや苛立ちが募る。寒さを紛らわせるように、自身を両腕で抱える様にして空を見上げる。 明日は満月。満月の輝く夜に雪が降るかもしれないなんて、ロマンチックの限りだ。 ーーーー狩りさえなければ。 痺れを切らしてノーカラーの黒のコートのポケットからスマホを引っ張りだす。タブレットが操作できる、お気に入りの黒手袋の人差し指で、アイツに嫌味の一つでも送ってやろうかとした時だった。
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