序章 影狩の夜に

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志築との狩りの時は、毎回こんな不毛なやり取りが繰り返される。 前回、『遅刻も個性』だと言われた時は、心底呆れたものだ。 ジロリと睨み返すが、身長の低い私に睨まれたところで何の問題もないと言わんばかりに、茶がかかった瞳が、飄々と見下ろしてくる。 「冴衣ってさ、ほんとすぐ怒るよねー。短気は損気ってガッコーで習わなかった?」 「習ってない。志築こそ、時間は守れって教わらなかった?」 「俺、冴衣の怒った顔より、笑った顔のが好きなんだけどねー」 唇の端を持ち上げると、こちらを揶揄うように視線を投げてくる。  「ばっ…馬鹿じゃないの!」 さっき貰ったばかりのカイロを志築の顔面目掛けて投げつけてやる。どうせ当たらない。 「おっと」 志築が、こちらを見てニヤッと笑った。 最後はいつもこうだ。無駄に見た目が良いこの男は、いつも最後は真剣に腹が立つくらいに揶揄って、私の反応を楽しんでいる。 結局、最後は、私が諦めて口を噤むのをわかってるのだ。
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