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「到着しました。」と扉が開けられる。
当たり前のように累に引っ張られて車を降りた。
百貨店の裏口なのか、お金持ちの人たちはここから入るのか、少し空気が冷たく感じられた。
「本日はお越しいただきありがとうございます。」
キレイなお辞儀に居た堪れない。
案内されるがまま、エレベーターに乗り豪華な部屋に案内された。
「こちらにお掛けください。こちらからお好きなものを。」
渡されたのはメニューの紙で横文字だらけ。
「僕はいつもの、累は?」
「任せる、千紗にはホットのチャイとマカロンで。」
「かしこまりました。」
「ご挨拶遅くなりました。オーナーの新田です。本日はわざわざ足を運んでいただき、ありがとうございます。では、ごゆっくりお過ごしください。」
累とななちゃんはオーナーさんの挨拶を適当に返して、それぞれのコンシェルジュの人と話し始めた。
そんなことより、累が頼んだチャイとマカロンには驚いた。僕がそれらを好きになったのは累から逃げ出したあとなのに…。怖くて顔を上げられない。
「お待たせしました。」
目の前に宝石のようなマカロンのタワーが現れた。悔しいけど、これには顔を上げざるえなかった。
「とりあえず、先に僕の選んじゃうから千紗はマカロン楽しんでてね!累も僕と一緒に見るよね?」
「わかったよ。橋田さん、千紗の欲しいものとか必要なもの用意しといて。」
ずっと僕の隣を離れなかった累がななちゃんの隣に座った。
ななちゃんと累は2人でタブレットを覗いている。
橋田さんは時田家のコンシェルジュだ、いつもあのマンションに僕の服を持ってきていた人だから覚えている。ななちゃんと累と話している人は霧島家のコンシェルジュさんだ。あの人もよく来ていたから覚えてる。
みんな僕のことを知ってるんだ。あの時のことだって、僕が何をされているかだって。
知っていて、誰も助けてくれない…。
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