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温かい何かに包まれて、満たされて目が覚めた。
見える世界は昨日と同じで、急に不安に襲われる。
なぜ求めてしまうのか、なぜ満たされたと感じるのか、わからない。
ずっと嫌で逃れたくて消えてしまいたいのに。
「…千紗。」
そう呟いて累は僕の頬を触った。
いつもなら怖いはずの手が優しくて泣きたくなった。
「千紗、じっとしてろ。」
そう言われて累が足首をそっと撫でた。
「七星に首輪はセンスがないって言われたから。」
足元にはアンクレットが光っていた。
「俺がいない時に勝手に外すなよ。」
僕なんかには似合わない、きっと高価なものだ。足元にそれがあることが怖かった。
「千紗、返事。」
「ぁ…はい。」
「あと、無くしたりしたら本物の足枷に変えるから。」
優しいなんて嘘だ。恐ろしいことを真顔で言ってくるのだ。やっぱり累から逃げないと…。
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