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エレベーターの扉が開き、目の前には見慣れたドアがあった。
綾くんがカードキーかざすとピピッと鳴り鍵が開く音がした。
前は普通の鍵だったからまじまじと見てしまう。
「千紗は初めてですか?ですが中は変わっていませんよ。」
その言葉の通り昔のまま。壁一面の大きなテレビも本棚になってるいる階段も僕が累と過ごした部屋も。
「1時間ゆっくりしたのち出ます。なので、累は千紗とヤるの我慢してください。」
「わかってる。」
「1時間あるなら仕事の話進めちゃっても大丈夫かな?」
「そうですね、4人揃ってるいますし。累も、ですよ。」
「はぁ、俺は3年も千紗と話せてないけど?」
「ご安心を、時間はたっぷりありますよ、累のせいで千紗は逃げたくても逃げられないのですから。」
「ほんとだよ、千紗怯えちゃって可哀想だよ。ね、経?」
「俺に聞くな。」
4人のテンポのいい会話についていけない。
逃してくれないくせに孤独にさせる。
4人はテーブルに各々パソコンなりタブレットなりを広げる。
僕はすることがないのに昔と変わらず壁と累に挟まれ座らされている。
みんな真剣な話をしているであろうに時折、累は僕の太ももを触ってくる。
感じたくない、もうあの快楽を思い出したくないのに。厭らしい手つきで反応してしまう。
「…っるい。」
仕事だと言っていたし、4人の邪魔をしてはいけないことはわかっている。だから小声で累にやめてほしいと目線を送る。
なのに、累はさらに際どい付け根を触ってくる。僕の方は一切見ない、みんなとタブレットを睨めっこしている。
「るい…。」
「千紗、静かに。」
また僕の呼びかけを無視する。そのまま僕の存在を忘れてくれたらいいのに、手はずっと僕の上。
ついに、累の手は僕の核心に触れてきた。小指で器用に円を描く。
「累っ!」
きっと僕は涙目で顔が赤くなっているだろう。
「何?そんなに俺に構ってほしかったのか?」
僕の動揺とは裏腹に何事もないような顔。
「…て、手が。」
「は?」
「さっ触るのやめて…ほし、ぃ…。」
「ヤるのは無しだと伝えたはずですが。」
「ヤってない、千紗が寂しそうにしてたから温めただけだ。」
「温める、ですか。」
「ほら、こんなに顔赤くしてる。可愛いだろ。」
累は僕の肩をグイッと寄せて首筋の匂いを嗅いだ。
俺のモノだ、と言わんばかりの行動に身体が震えた。この後、出かけると言っていたし隙を見て早く累から逃げないと…。
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