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「っていうか、なんでお前あのとき助けてくれたんだ?」
自室に広毅を案内し、ベッドに腰を下ろすと野暮と分かっていても俺は口を開いてしまった。
「――実は、俺の家でも猫を飼ってたんだ」
雨音が響く中、彼はボソリと呟いた。
「もともと、猫は弟が飼いたいって言い出したものだったんだよな。で、保護猫をもらって。でも、すぐに飽きて、俺が結局世話を押し付けられた。そんなに俺は猫が好きじゃなかったんだけど――まあ、情が移ったてとこじゃねえかな。」
「――で、飼い始めたときにもう十歳で、去年――。」
広毅はそこで言葉を濁した。
「あのときも――」
広毅は遠い目をして呟いた。
「さすがにヤバいだろ、って。病院連れてかなきゃヤバいだろって言ったのに、あいつは大丈夫だ大丈夫だって。あのクソ野郎。そんなの真に受けなきゃ良いのに、俺も、塾を優先してシロのそばにいてやれなかった。助かる命が助からないのは……嫌だ」
どこかで隼人はシロにこはくの姿を重ね合わせていたのかもしれない。――シロという名前からしておそらく白猫なのだろう。
「――良かったな……」
膝の上で丸くなったこはくの背中を撫でながら広毅は言う。その顔には微笑みさえ浮かんでいて。
――そんな、優しそうな顔もできるのかよ。
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