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彼のオーガトン
ガザンは、唐突にあの少年が訪ねてきた事を思い出した。いや、彼を拾った事を思い出した。最近、記憶力の衰えが激しく、あまり動きたくない日が増えた。いくら、ジュンが定期的に討伐する事で、魔物はある程度の数が守られているにしても、周りは老人にはきつい。
「もうすぐ、君たちに会える。思い出話が沢山出来るよ」
そういって、ガザンは笑う。衰えた皮膚。肉体。だが、彼は満足だった。
オーガトンは、彼の家。暖かな家族が住む場所。
それは、やがてホラ話から一種の伝説になり、彼は幸せの記憶を守り続けた。いや、すがっていたと言っていい。
もう、彼にかりそめの場所は要らなかった。
ガザンは、やがて目を閉じ、二度と目を覚まさなかった。
ガザンが目に付くところに置いていた絵は、二つある。一つは、仲間との絵。もう一つは、彼が大きく歯を見せて笑い、取り囲むように幾人もの冒険者が笑い合い肩を組む姿。
冒険者の酒場では、違う噂が流れることになった。オーシュレンで最高の冒険者。ジュンとその仲間の冒険。そして、また彼の話を起点として伝説やホラ話が生まれていく。
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