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皆が俯いたところで、 「ごめーん!お待たせしちゃってえ!!」 いきなり場違いな明るい声が取り調べ室に響き渡った。 「捜査一課の日高でっす!」 いつも対応してくれる黒髪の刑事とは違う、茶髪の男だ。 顔が妙に整っていて、着ているスーツもくたびれていなくて、ぱっと見は刑事どころか警察の人間にも見えない。 「ええとー、晴美さん、夏希さん、明奈さん、千冬さん。全員お揃いだね?」 クリアファイルを見ながらいう日高は、大きな瞳を素早く4人に走らせた。 「じゃあ、さっそく行こうか!パトカーと俺の車とどっちがいい?」 「あの……」 明るい雰囲気で流されそうになるのを堪えるように、千冬は低いトーンで言った。 「なに?ええと……千冬さん?」 日高が千冬を見下ろす。 「これで最後にしてもらいたいです。事情聴取も、現場検証も」 3人が同調するように頷く。 「……………」 眉間に皺をよせ唇をぎゅっと結んだ千冬を、日高は見下ろした。 そして―――。 「ね!俺も最後にしたい!さ、行こう!」 そう言うと取調室のドアを開け放った。 「……あ、いや、そうじゃ……」 「早く解決したいよー、俺だってー」 話を聞こうとせずにドアストップを足先でバチンと広げながら、日高は続ける。 「あの……」 「でもこれ、君たちの先生だけの問題じゃないからさー。連続殺人事件だから!いろいろ大変なのよ、捜査もさー!」 「でも私たち……」 「かえってーーー」 ヘラヘラしていた日高の表情が一瞬でゼロになった。 「かえって、ただの殺人事件だった方が、ことは単純なのにな」 「―――」 「…………」 「……っ」 瞬間的に出した刑事の殺気に、千冬の背後の3人が凍り付く気配がする。 「よし!じゃあ行こう!」 日高は明るい表情に戻ると、胸ポケットから車の鍵を取り出し、先陣を切って歩き始めた。 「千冬……」 明奈が身体を寄せてくる。 その小さな身体がカタカタと震えている。 「―――大丈夫だよ。私たちは何もしてないんだから」 千冬は明奈の手を握りながら、鼻歌まじりに前を歩く刑事を睨んだ。
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