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ダメだ。 もう朝まで解放してもらえない。 萌々香はこくんと唾液を飲み込んだ。 「萌々香、早く入りなさい!」 父親が大きな声を上げる。 ここで捕まったら―――。 『嫌なら嫌だと言え』 何処からともなく八雲の声がした。 『お前が本当に嫌だと言えたら―――』 ―――俺が、助けてやる。 「……いや」 萌々香は父親を睨んだ。 「嫌よ。帰らない」 「萌々香―――?」 父親が睨む。 「私は、帰らない!!」 そう言うなり、萌々香は走り出した。 忍の走り方。 前傾姿勢。腕を後方にして、手を振らず、腰を振らず、 ただ前に進むのみ。 「だよね、メンマくん……!」 萌々香は夕陽が差す緋色の住宅街をただ走り続けた。
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