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バスから降りた頃にはもう日は落ちていた。
生ぬるい風が通り過ぎる。いよいよ本当に振り出しそうだ。
萌々香は拘置所を見上げた。
八雲は今、何を考えているのだろうか。
身の潔白を証明もできない、いわば悪の巣窟のような場所で、平気なのだろうか。
―――悪の巣窟?
おかしくない?
だってここ、
警察組織じゃん……?
「……考えるな!!」
萌々香は正面玄関を避け、中庭に入った。
先ほど勾留室から正面玄関に回る経路は覚えた。
コの字状の外壁に沿って進みんだあと、渡り廊下を超えた突き当りで東に。
そこが、男子勾留室……!!
「…………」
鉄格子がはまった同じ形の窓を見上げる。
―――このどこかに社長が……!!
と、一番奥の北側の高窓だけ不自然に少し開いているのが目に入った。
足音を立てないようにその窓の下に張り付く。
高窓は2メートルほどの高さにあり、とても覗けない。
外壁に背中を付け、耳を澄ませる。
「―――――」
何の音も聞こえない。
ここは一か八か……。
「………ニャーン……」
ミケは、鳴いた。
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