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「ニャーン……ニャーン……」
続けて鳴いてみるが中からの反応はない。
ここではないのだろうか。
どうしたらいい。
ここまで誰にも見つからずに来れたのに……!
「――――!」
今、確かに人の気配がした。
萌々香は壁に張り付いた。
「――――はあ」
誰かのため息の音がする。
誰?
社長……?
それとも―――。
「………下手な嘘つくなよ」
「―――!!!」
「やっぱりお前、嘘つきだな。ミケ」
低い声が笑う。
「―――社長……!!」
萌々香は振り返って、高窓を見上げた。
「大丈夫ですか!?」
「――ああ。心配して一人で来てくれたのか?」
「……はい……!」
それは確かに八雲の声だった。
萌々香は涙を溜めながら高窓を見つめた。
「社長が殺すわけないって思って……!だって日高さんとあんなに仲良しだったのに!」
「―――ほう」
「だから絶対に社長は犯人じゃないと思って、もしここで言えない理由があるなら、私が……」
「おい待て。話を勝手に進めるな」
八雲は困ったように笑った。
「誰と誰が、あんなに仲良しだって?」
「―――え?」
そのとき、背後から出てきた大きな手が萌々香の口を塞ぎ、長い腕が萌々香を羽交い絞めにした。
―――社長……!!
萌々香は身動きの取れないまま、自分を押さえつけた人物を見上げた。
「――――!?」
―――あなたは……!!
目を見開いた萌々香に、男は唇に人差し指を当てて笑った。
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