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深夜ーーー。
八雲は皆が寝静まった拘置所で瞼を開けた。
足音が聞こえてくる。
しかしそれは看守が履いているスニーカーとは違う。
上質な革靴。
しかもヒールのある女性もの。
ドアが開き、勾留室に面した廊下に女が入ってきた。
「―――兎沢八雲ね」
八雲は起き上がりながら、この時間の来訪にもなんの反応もしないで俯いている2人の看守を睨んだ。
「少し話を聞きたいの。いい?」
女は豊満な胸元からソレを取り出すと、八雲に向けた。
「ーー話を聞くって態度じゃねーんだけど」
八雲は黒い銃口を見上げながら笑った。
「あなた―――執行人Xについて、どこまで知ってるの」
「――悪いが俺は黙秘をしている」
「そんなの知ってて来てんのよ。意味わかんない?図体ばかりでかくてオツムの中は空っぽかしら?」
女は左手で格子を握りながら、八雲を覗き込んだ。
「ーー話さなきゃ殺すって言ってんの」
女の薬指には、ルビーの指輪が光っていた。
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