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あの日。
千冬を送り届けてから、八雲の携帯電話をいじり出した日高に、八雲は目を細めた。
「本当にやるのかよ……」
「やるよー。いつ逃げられるかわかんないからねー」
日高は笑った。
「だってーーー」
「警察のなかに内通者がいる……だったか?」
「その通り!」
これはこの事件を日高が追い始めてからの持論だった。
そうでなければここまで長い間、犯人逮捕どころか足跡まで見つけられないという日本警察の体たらくの説明ができない。
クククと笑いながら日高はオンラインゲーム【ビレッジハウス】に繋いだ。
「今回のことで『執行人X』の殺人は依頼制であることが分かった。その依頼方法もね。まあこれは次々に手法を変えてるんだろうけど」
【Clear Stream】に入る。
「依頼してみるしかないでしょ」
日高は占い師の館まで来ると裏に回り込んだ。
「―――」
その手を八雲が掴む。
「―――やめとけよ」
色素の薄い目が日高を睨む。
「―――今さら?冗談」
日高はふっと笑った。
「何のために離婚したと思ってんだよ」
そう言うと彼は、八雲の手を振りほどいて、掲示板を開き、自分の名前を書きこんだ。
「……さあこいよ。『執行人X』。俺のことを頃しに来い……!」
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