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「それで、関係者の名前を全部吐いたってことですか?」
織田は日高を見つめた。
「まあ、全部かは怪しいと俺は思ったんだけどな。八雲のやつが全部だって言うんで、信じるしかないでしょー」
日高はスティックタイプのポテトチップスを咥えながら言った。
「まあ、紛れてる奴も、そこから芋づる式に彫り上げて見せるって!」
「かっこいいすね」
目を輝かせた織田に、
「お前がやるんだよ」
日高は笑った。
刑事部は、小林が出した名前の人物たちに聞き込みに言っていて、閑散としていた。
遅番で出勤したばかりの織田が、もう帰ろうとしている日高を見つめる。
「―――日高さんはいつ頃から決めてたんですか?」
「は?」
「その、執行人Xのおとり捜査をやろうと」
「――――」
日高はホワイトボードを見上げた。
そして、一番初めの執行人Xによる被害者の写真を見つめた。
佐藤友則。
当時彼は、たったの16歳だった。
「―――さあな」
日高はそう言うと立ち上がった。
「じゃ、俺、夜勤だったから帰るわ」
「あ、お疲れ様です!」
織田が頭を下げたところで、
「日高さん!!!」
入口から女性が飛び込んできた。
「私まで騙すなんて、酷いですよお!」
それは青い鑑識の制服を着ている井上だった。
「悪い。このことを知ってるのは最小限に抑えようってことになって、刑事部長と織田しか知らなかったんだ。ホントだって」
「それにしても、そんな危険なこと!本当に殺されてたらどうするんですかぁ!!」
井上が目に涙を浮かべながら日高を見上げる。
「私には……言ってほしかった……!!」
「はあ?」
「だって、そのために奥さんと無理矢理別れたとか、悲しすぎて……!」
「馬っ鹿、お前……!」
日高は慌てたように織田を振り返ると、井上の肩に手を置き、回れ右をさせて慌てながら刑事部を出て行った。
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