プロローグ

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プロローグ

この世界は不公平だ。 生まれた瞬間に運命が決まる。 金、地位、権威、容姿、頭脳どれも後天的には抗えない要素だ。 努力では限界がある。 いや、日本に生まれた時点でまだ勝ちだ。 貧困国に生まれた瞬間に負けに入る。 俺は小学一年でこの現実を知った。 全ての元凶はこの世界を支配する金融資本システムにあるのだ。 「俺の手で必ず、この腐った金融資本システムを変えてやる」 俺の名は湊瞬馬。 西暦2019年生まれ。 俺の生まれた年に天皇が変わり、平成から令和になったらしい。 その年に新型ウイルスが中国で発症し、翌年から世界中で大流行した。 数年間、新しい変異株が次々と生まれ、世界五億人以上の感染者、一千万人以上の死者を出てしまった。 俺はまだ幼かったから、その記憶がない。 これは、G5の爆発的な人口増加防止策のために、意図的に作り出し、ウイルスを世界中に慢性させた人口削減計画の陰謀論もあったがそんなことは今更どうでも良い。 歴史的事実は変わらないのだ。 過ぎ去った過去は戻せない。 今の仮の姿は東英大学、大学院の一年だ。 研究室内では裏の俺の顔を知らない。 日本の大学で一番、金や権力のある理工学部に進んだ。 海外の大学からも誘われたが、計画を遂行するには日本がやりやすい。 学部のときに研究していたバイオインフォマティクスを大学院でも引き続き研究ができている。 この研究が進めば、俺が例え、死んでも自分の意志が永遠にこの世に存在し、後釜が作れる。 計画実行中に完成させる自信はあるが、この研究はあくまでも俺が死んだときの保険だ。 計画の伏線は全て打った。 エンジニアだった父親の影響で小学校のときにプログラム、コンピューター、 数学、物理学、電気回路、ロボット工学、材料工学等、ものつくりに必要な知 識と技術を学んだ。 七歳の誕生日に高性能のワークステーションを買って貰って、CADでモデリングして、CAEで解析し、超小型バッテリーを作った。 親に弁護士を立てて貰って、契約書を作って、バッテリーメーカーに売った。 これが車載用のバッテリー等に使われ、当時、天才小学生として、メディアに取り上げられて、未だに売上の5%が収入となって入ってくる。 次に俺は、工場の生産管理の設計をして、町工場を貸して貰って、実際に作った。 工場の生産効率と歩留まり率が上がり、売上が上がった。 俺は手に入れた金で工場を買い取り、会社を設立し、生産の拠点とした。 従業員を雇い、次々に製品を開発、生産し、メーカーに販売し続けた。 勿論、ちゃんと学業も両立した。 中学では大学院で習う量子物理学、生物学、抽象数学を勉強し、高校では人工 知能、脳科学について研究した。 金、権力、地位、頭脳など力の前では無に等しい。 物理的な力さえあれば、殺される心配もない。 仲間はいらない。 足手まといになるだけだ。 裏切られたときのリスクを考えると、計画に支障をきたすだけだ。 他人を始め、ありとあらゆるものを利用すれば良いし、実際にそうしてきた。 機は熟した。 小学一年の頃、決意した 「俺の手で必ず、この腐った金融資本システムを変えてやる」 その計画を本格的に実行するときが来た。 その名はプランX。 俺は誰もいない研究室で昔をふと思い出した。 そう・・・・・伏線の始まりは小学校六年の夏だった。
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