名も無き猫の最後

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 事故現場の血だまりに横たわる野良猫――、 死神はじっと見つめるが明らかに生きている。その奇妙な光景に事態を呑み込めないのか、すぐさま立ち去ろうとはしない。そもそも人間の子供の魂を連れ去りに来た死神が目にした姿は全くの別物なのだ。 「フッ、共にひかれたか――、死にぞこないめ」  人の死に宿り魂を連れ去る死神。動物の生死に興味などある筈も無く、目当ての少年の運ばれた病院へと向かう矢先、背後から声を掛けられた。 「お待ちくだされ――」 「……」  振り返る死神が目にした姿は、動物の魂に宿る死神だった。
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