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4話 謎の多い依頼
1階は足の踏み場もないような状態なので、2階の応接間に案内する。古民家を買い取ったため、そこには前の主が残した調度品が置かれていた。
前の主はそこそこに裕福だったらしく、それらは嫌味のない上品さだ。ニコラスは金の髪に薄緑の瞳、それからわりと端正な顔立ちをしていたので見かけだけなら部屋と見事に調和している。
だがだらしなく後頭部を掻く仕草が、彼の品位を損なっていた。もっともニコラスは自分の品位なんてものにはいささかも興味がなかったのだが。
ソファーを彼女に勧めたニコラスは、改めて尋ねた。
「ええと、それで? お話とはなんですかね」
「私はエドナ。無茶をしに行った友人を救ってほしい」
「無茶?」
「ああ、第13迷宮の隠された間にたった一人で挑みにいった」
第13迷宮。そこはほんの数ヶ月前に攻略の達成された比較的新しい迷宮だ。だが未だ未攻略の部分があるのではないかという噂はある。という程度のことは、攻略から離れたニコラスでも知っていた。
「ええと、アズさんはまた何でそんな……」
「かつて神々は魔物を巨大宮殿に封印した。その時、特に力を持った魔物はさらに念入りに、二重の封印を施したというのは知っているか?」
ニコラスは頷く。
「ええ。それが隠し部屋の魔物……封印獣だと言われていますね」
「アズはその封印をたった一人で解き、獣を外に出そうとしている」
老獪な喋り方をする少女だった。同じ年ごろのように見えるが、リディアと纏う雰囲気はあまりにも違った。恐ろしくて、禍々しい何かが極限まで薄まったような、奇妙な気配だ。
封印獣の封印は、内からは解けないが外からは簡単に解けてしまう。ただ扉を開くだけでいい。それだけで、中の獣は解放される。
「何故アズさんはそんなことを?」
ニコラスの問いに、エドナは沈黙する。話したくない事情があるらしい、とニコラスはすぐに察した。
依頼人に隠し事があるとやりにくい。だからと言って第13迷宮でもし突然強力な魔物が封印から解かれれば、今現在そこにいる者がどうなるか分からない。攻略したての迷宮には攻略者だけではなく、一般の研究者や考古学者なども多く赴くのだ。
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