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7話 危険の前兆
「お前のそれ」
道中先頭を歩いていたエドナが、ふとリディアのペンダントに目を向けた。
「それは、また奇妙なものを持っているな」
彼女の顔は戸惑っているように見えた。それも無理はない。そのペンダントに込められたものを感じとったのだろう。
リディアはそのペンダントをぎゅっと握りしめてふわふわと笑った。
「とっても大切なものです」
その瞬間、そのランタン型のペンダントの光が揺らめいた気がした。ニコラスの呼びかけには応じないくせに、リディアの声には応えるらしい。まったく現金なやつだと思わず苦笑してしまう。
エドナの様子がおかしくなったのは、暫く歩いてからだった。
「ふ、うっ」
「エドナさん?」
彼女が突然悶え始めたのだ。膝をつき、自分を抱きしめる彼女の鋭い爪が、彼女自身の腕を傷つけていた。
「あ、う……っ、だめ……だ……」
その瞳はうつろで、滝のような汗をかいている。ニコラスはしゃがみこみ彼女の肩を叩いた。
「……エドナさん、まだいけない」
「……ああ」
エドナはふらふらとよろけながらも立ち上がる。そしてまた、歩き始めた。何か刻限が迫っていて、それに間に合わせようとするかのような足取りだった。ニコラスとリディアは顔を見合わせ、歩くスピードを速くした。
「あいたあっ」
「あは、はは……」
その直後にリディアが転んだので、思わず苦笑してしまったのだが。
「は、そいつ、本当にどんくさいな……使えるのか……?」
苛々としているらしいエドナを宥める。
「信じてください。リディア、大丈夫か?」
「はいぃ……」
本当に危険に晒された時、もっとも頼りになるのは彼女だ。いや、彼女というよりは。
ニコラスは彼女の首にかかったペンダントを見つめた。
(頼むぞ、□□□)
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