プロローグ

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プロローグ

かつて人の存在しない昔、地より這い上りし魔と天より舞い降りし神の二種族が世界には存在した。 彼らはどちらが地上の覇権を握るかを争い、熾烈な戦いを繰り広げた。 その結果は相討ちと呼べるに等しいもので、神は魔を自身の使っていた巨大宮殿へと閉じ込め封印することに成功した。 しかしその代償として自らの力を大幅に使い、残った力で天上へと帰った。 やがて幾度も地殻が変動し、巨大宮殿は地に埋もれたという。 それが事実であったかは定かではない。だがその後世界に誕生した人は魔と神の時代を夢想し、そしてそれが実在する証拠として古代遺物を挙げた。 神のおわす天上に昇ることはできなくとも、魔の閉じ込められた地下へと降ることはできる。 人々は開いた穴から湧き出る魔物の駆除のため、あるいは鉱物資源などのため、あるいは先程挙げた古代遺物の獲得のため地下へと赴いた。 そして巨大宮殿付近にやがて町ができ、大国となった。これがハルツ公国であり、その付近にいくつもの小国が点在することになった。ハルツの首都はシュノヴァといい、この世界有数の繁栄都市となった。 その理由の最たるものが、「迷宮」へ飛べる巨大転送門(セントラルポータル)ブランデンブルクが存在しているということだろう。 巨大宮殿には今まで幾つかの入り口が発見されており、人はそれを発見した順に「第〇迷宮」と名づけ、門を設置しいつでも行き来できるようにした。 何しろ巨大宮殿は神の寝所のためかはたまた魔の呪いのためかあまりにも入り組み、迷宮と呼ぶにふさわしかったからだ。他の入り口から入った者が他の出口に辿り着いた事例は未だないほどだ。 人々には迷宮攻略という夢を見るだけの力を発達させていた。これが魔法文化である。 神からの贈り物と言われる「魔法」は、初めはただ指先に火がともると言った程度のものだった。しかし幾人もの魔法の素養を持った者達によりそれは体系化され複雑化し、今では歴史や数学と並び、学問の一つとなっていた。 人々は武力と魔法を用い、迷宮の中をさえその文明の光で照らそうとした。この先駆者たちを、「攻略者(コンクエスター)」と呼んだ。
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