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優しい君への最後の願い
僕は気づいたら病院のベッドの上にいた。手が片方暖かい。彼女がずっと僕の手を握っていてくれていた事が瞬時に分かった。
「蓮君!?良かった...もう...死んじゃうかと...」
音羽は急いでナースコールで僕が目覚めたことを伝えていた。
「.........音...羽...」
「何!?どうしたの?」
「あの時...言いそびれたけど...ずっと前から...音羽のことが...好きでした。」
彼女の目からはホロホロと涙が溢れていた。
「...!あっ涙出てきちゃった......あはは...私も!蓮君が好きでした。大好きでした!」
「...僕なんかの為に...泣いてくれて...ありがとう」
僕も涙が自然に溢れ出てくる。
「僕には...泣いてくれる人が...いないから...」
「嘘だよ...!そんなの嘘!この前蓮君の家に忘れ物届けに行った時、お母さんが出てきた。蓮と仲良くしてくれてありがとうって。泣いてたんだよ?凄い愛されてるじゃん!?蒼真君だって親友なんでしょ!?泣いてくれる人がいないなんて言わないで!私だって...泣くんだよ...?」
「...ごめん。そっか...お母さん...泣いてたんだ...
音羽...ありがとう。」
「...うん...!」
「音羽...外に...少しだけ...出たい...2人で」
「...うん。分かった。医者の人に言ってくる!」
「綺麗な景色...だね。」
「うん...」
「僕は...きっと...もうすぐ...死ぬよ...」
「うん...」
「僕は...音羽と出会って...全てが変わったよ。
やりたい事も特にない。死にたくないなんて思わなかったし、楽しい事だって無かった。ただ...死を待ってただけ。そんな時...音羽と会ったんだよ...音羽......ありがとう。」
「...うん...」
音羽の声が震えている。そんなに悲しまないで...僕も音羽と別れるのが辛くなる...僕も君を1人にしたくない。心配で心配で仕方がない。
「そんなに...泣かないでよ。心配になってくる...」
「...ごめん...」
「...ねぇ音羽...明けの明朝を一緒にみたいです。」
「...!ありがとう...」
「音羽に......幸せが訪れるのを......願ってる...」
「...ありがとう...私も...蓮君と出会ってから凄く楽しかったよ!蓮君...いなくなっても絶対に忘れない...!大好きだよ...!」
「ありがとう。」
そうして僕は静かに目を閉じた。
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