ておくれ。

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 頓挫して、頭を抱えたまま残り一カ月という有様である。卒業論文が提出できなければ、確定で留年ということになってしまう。そうなれば、せっかく内定をもらった広告代理店の仕事もパーだ。  とはいえ、自分の感想や考察だけで論文を全て埋めるのは不可能に近いし、あまり憶測だけで文章を書き殴ってもまともな評価は得られないだろう。最低でも“可”評価は貰わないと学校を卒業することができなくなってしまう。  仕方なしに、現在はパソコン室に通ってネットで調べながらどうにか体裁を取り繕おうと足掻いているわけだったが。 ――条件が厳しすぎる。ネットでみんなが知ってるような都市伝説なんか使ったってろくな評価されないに決まってる。最低、可がとれればいいけどできればもうちょっと良い評価も欲しいし……!  また、仮に誰も知らないような話を見つけたとて、ある程度インパクトがなければ印象になんて残らないのだ。  認知度が低く、それでいて人の恐怖心を煽りそうな面白い怪談はないものか。それこそ、かつて大ヒットした映画のような“呪いのビデオテープの女”とか、“入ったら問答無用で呪われる恐怖の家”みたいな衝撃的な画とイメージが欲しい。  卒業論文では挿絵や写真を使ってもいいということにはされている。できればそういうものを使うと説明が簡単になるし、拙い文章力でも読みやすくなってありがたいのだが――。 「ん?」  適当なキーワードを打ち込んで検索していたところで、私は一つのウェブサイトに目を止めた。真っ黒な背景に、いかにもおどろおどろしい雰囲気の井戸の写真が表示されている。タイトルはシンプル。――“見てはいけないものを集めたサイト”。捻りも何もない、ドストレートなタイトルの下に、“ENTER”の文字だけがある。  それが、かえって興味をそそられた。 ――へえ、面白そうじゃん。見てはいけないって言われたら、人間見たくなっちゃうもんだよねー。  私はENTERをクリックして中を覗いてみることにした。しかし、期待に反して中はまだ工事中らしく、置いてある“項目”の数も非常に少ない。見てはいけない仮面、見てはいけない本、見てはいけない指輪――そのたった三つだけだ。  それでも、私は何故か強烈に“見てはいけない仮面”にが気になって仕方なかった。クリックすれば、現れたのは以下のような文章である。 『見てはいけない仮面の話。  今から何百年も昔のこと。ヨーロッパのとある国に、ある有名な呪術師の男がいた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加