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呪術師は国の命令で、遠くから数多くの人を呪殺できる方法を模索していた。男は非常に優秀であったが、現在の男の力だけでは一人の人間を時間をかけて呪い殺すのが精々である。政府が望むような、敵国の要人や軍隊を一気に呪い殺すようなことなど不可能だった。
やはり、大きな呪術を完成させるためには、より多くの人間の怨念や憎悪、悪意を集めて煮詰めなければいけない。
そこで男は国の許可を取って、あらゆる奴隷を買い取って実験を始めたのだった。まず、己の血を染み込ませたナイフで木に仮面を彫って作り上げた後、買い取った奴隷の一人に装着。
そして、次に奴隷の腹部に頑丈な縄を結び、両脇から滑車で巻き取るということを始めたのである。これは、瓢箪攻めという名前でも知られる拷問の一つだ。頑丈なロープに腹を締め付けられた奴隷は、当然もがき苦しむことになる。内臓はロープに絞められて恐ろしい力で引き潰されていく。仮面をつけられた奴隷は、血と涙と吐瀉物で仮面を汚して絶命した。
さらに、次の奴隷を呼びつける。その奴隷にもまた仮面を被せ、今度は鋼鉄の靴を履かせた。これは、スペインの靴とも呼ばれる拷問器具でだ。隙間に釘をねじ込んでいくことでどんどん奴隷の足を締め付け、挽肉に変えていくというもの。これは奴隷がなかなか死なずに長く苦しむことでも知られている。やがて奴隷は悶絶した後、仮面を鼻水と涙で汚してショック死した。最後に、その仮面には奴隷の血をすりつけて終了とした。
呪術師の狂気は止まらない。
奴隷の性器に鉄球をねじ込んで開く苦痛の梨も試した。両手両足を馬に引っ張らせて引きちぎる車裂き刑も試した。ユダのゆりかご、車輪刑、エクセター公の娘、スカベンジャーの娘、アイアンメイデン、タイヤネックレスも試した。
男は必ず、拷問の際に同じことをする。仮面をつけた状態で、何度も奴隷に声をかけるのだ。拷問前、拷問中。そして、死の間際までえんえんと。
“なあ、今どんな気分だ?”
“許してほしいか?”
“俺に言いたいことはあるか?”
“どれくらい苦しくて痛いのか教えてくれ!”
こんな具合である。当然、奴隷たちは許しを乞うか、あるいはこのような理不尽を課す呪術師に恨みつらみを吐いた。男は満足していた。彼等がそうやって憎悪を貯め込み、その血や涙や汚物を仮面に染み込ませるたび、仮面に呪いが蓄積して大きな力に変わっていくのを感じ取っていたからである。
本来、木でできた仮面は火でくべると燃えてしまうはずだった。しかし、散々繰り返した拷問の果て、奴隷にタイヤネックレスを課す段階になった時にはもう――タイヤと奴隷と共に燃やされても、仮面だけは一切傷が残らず燃え残るようになっていたのである。
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