ておくれ。

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 呪いが完成した、呪術師はそう考えた。  そして最後に、その仮面を自らが身に着け、王の命令のまま敵国に向けて呪術を行ったのである。  呪いは大成功を収めた。  呪われた敵国の要人と兵士達は、次々と原因不明の病で倒れていったのである。誰もが体中の穴という穴から血を噴出し、のたうちながら死んでいく。まさに、悪魔の所業と言っても過言ではなかった。  しかし、王が褒美を与えようと呪術師を呼び出しても、何故か呪術師は王宮に馳せ参じようとしない。おかしいと思って王様の使者が見に行ったところ、呪術師は仮面をつけたまま血まみれになって死んでいたという。  仮面は、男の顔の肉にべったりと貼りついて剥がれなくなっていた。  これは非常にまずいものだ、と他の霊能者や魔術師の類が指摘するので、王様はやむなく呪術師の遺体ごと仮面を焼却して封印したはずだったのだが――。  後に。  その墓を調べたところ、仮面だけがなくなっていることが発覚。呪術師の顔の肉ごと消失したものと思われる。  果たして仮面は何処へ消えてしまったのか?  確かなことは、呪術師の遺体に触れた使者たちも、命令した王様も、それからこの話を王様から聞いていた妃や王族たち、貴族たちも全て――同じように、全身から血を噴出して謎の死を遂げたということである。  仮面は、今もなお世界のどこかにあるのかもしれない。  もし存在するのならば、絶対にそれを見てはならない。知ってもならない。伝えてもならない。  呪いは今も、続いているのだから。』  気づけば。  私はその文章を、まるまるコピー&ペーストして論文に貼りつけていた。コピーガードがかかっているサイトではなかったためである。 「ふ、ふふ……」  ありがちな話であるのかもしれない。タイヤがこの時代に本当にあったの?というツッコミどころもある。しかし、とにかくオチが面白い。この仮面は、ひょっとしたら今日本にあるかもしれないのだ。いや、日本語のサイトに掲載されているということは、恐らくは。 ――見てみたいな、そんなやばい仮面なら。どんなのだろう。  私はその文章をまるまるコピーして論文にしたことに罪悪感も何も一切抱かず、それ以外は己の考察を大量に書き添えることでレポートを仕上げることにしたのだ。  卒業論文としては、多少ボリューム不足だろうが問題はない。教授も、文字数下限を定めていたわけではないからだ。  内容が面白ければ、きっと喜んで評価してもらえることだろう。 ――ていうか、面白い話だし!オカ研のみんなや、ネット友達の皆にも教えてあげよーっと!
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