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ボブの髪型に、キラキラと光る大きなイヤリングを付け、こっちに向かって笑顔を浮かべる母は62歳とは思えない程、若々しくて美しい。
当選回数8回。議員生活30年の母からはベテラン政治家の自信に満ちたオーラが漂っている。同じ空間にいると、自信のない私はオーラに圧倒されそうになる。浅羽に傷つけられた今夜は特に母のオーラが痛い。できれば顔を合わせたくなかった。
「ひなちゃん、しばらくね」
優しく微笑む母の顔は完璧な女王様に見える。
「大臣、何のご用ですか?」
「お母さんって呼んでちょうだい。他人行儀な呼び方はしないで。ひなちゃんはお母さんにとって大事な娘なのよ」
母の言葉をそのまま受け取らなくなったのはいつの頃からだろう? 言葉の裏に何か思惑がある気がしてしまう。
「大事な駒の間違いでは? 言っておきますけど、大物政治家の息子、大企業の社長の息子、キャリア官僚の方とのお見合いをセッティングされても行きませんから。結婚はできません。私が男性に触れられないのはご存じでしょ? そうなった原因を作ったのも大臣なんですから」
母の顔から笑みが消える。
「相変わらずね。今夜はお見合いの話もしないし、大学を辞めろとも言わないわ。ひなちゃんにとっても大事な話があるから呼んだのよ」
疲れたようなため息を落として、母がこっちを見た。
大事な話?
私に結婚と政治家になる事を強要する以外に大事な話があるの?
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