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その夜は三田村君と暮らす家ではなく、実家に帰った。
誘拐事件の事を母に問い詰めようと思ったのに、こんな時に限って母は出張中でいなかった。
悶々とした気持ちが消えなくて、友美に電話した。
三田村君が私に秘密にしている事や、三田村君が三友グループの御曹司だった事、元許嫁らしき女性がいた事、脅迫事件が母の計画かもしれない事を聞いてもらった。
「千葉にいた時、妃奈子に手紙を送ったのは三田村君じゃないと思うよ」
スマホから友美の声が流れて来た。
「彼はそんな事するような人じゃないよ。妃奈子を怖がらせるような事はしないと思うな。それから、お母さんを疑う気持ちもわかるけど、そこまでしないよ」
意外だった。友美も犯人は母だって言うと思ったのに。
「どうしてそう思うの?」
「だってさ、妃奈子は男性アレルギーなんだよ。そんな妃奈子を見知らぬ男に襲わせるとは思えないんだよね。ますます妃奈子が男性に近づけなくなるじゃない。そしたら、お母さんの野望の政略結婚からも遠ざかるだろし。本当にお母さんが首謀者だとしたら、刺客は男じゃなくて、女を使うと思うな」
言われてみればそんな気もして来た。
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